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タイの格闘技★裏事情

投稿日:2008年3月11日 更新日:

muaythai

(先日)僕の日本時代の友人が、某K-1選手のテレビ取材でタイに来ていて、簡単な現地アテンドをしたのだが、タイの格闘技★裏事情というものを、いろいろ直に見て感じ、感動するとともに驚愕した。そのときの話である。そもそも、僕はサッカー好きだけど、格闘技関係にはあまり関心がないし、詳しくもない。ただ、日本では亀田ブームを初め、一時代を築いたK-1、総合格闘技系の団体も多い。

その中でも人気のあったイベントPRIDEが、UFC(アメリカ最大の総合格闘技団体)に買収されたことなどなど考慮すると、格闘技がエンターティメント・コンテンツとして、かなりの地位まで来ていることは間違いない。(と思う) だが、テレビの中だけじゃリアル(真実)は見えてこない。で、実際の実力はどーなのよ?と感じてしまうのが僕の悪いクセなのだが、結局のところ、全くその通りだということが判明した。(多分)

最近、日本のK-1界で、タイ人最強戦士と言われている?ブ●カオ。訪れたジムに彼を過去に教えたことがあるというトレーナー(タイ人オッサン)がいた。で、早速、「彼の実力は、どーなのよ?」と聞いてみた。と、トレーナー氏曰く、「あいつは日本に行って、もう終わった選手だ。後は下り坂・・。」との返答。その理由を聞くと、テレビ映像で見ただけでも体にハリがない、全盛期より動きが遅いなどなど散々なことを、はっきりと物言うトレーナー氏。まじ??

でも、よくよく聞けば、あれぐらいの実力の選手ならタイに山ほどいるというのである。ブ●カオ級なら山ほど。ブ●カオ以上もゴロゴロいる。さすがは、ムエタイの故郷。恐るべしムエタイ王国である。では、なぜ、そんな最強戦士たちが、K-1やら総合にもっと参戦しないのか?答えは簡単!それは行けないからである。正確に言うと、日本(外国)に行きたいけど、そのチャンスがない。コネクションがないからである。で、もっと突っ込んで言えば、本場のムエタイチャンピオンなど、実力マジ級の選手が出場したら、他に勝てる相手がいなくなって、面白くなくなって、興行自体が成り立たなくなるからである。結局は、大人のビジネスの話(作られた世界)というわけですな。(むむっ・・)

では、なぜ、そんなに本場ムエタイ選手は強いのか?という話になってくるわけだが、数日間の滞在から、様々な理由を教えられることになった。まず、タイ人におけるムエタイとは一般生活に密着した国技であると言える。日本では、相撲が国技として有名だが、一般の人々の生活には、さほど密着した感はない。だが、タイの子供たちは、日本の子供がサッカークラブや、少年野球、空手教室に通うような感じでジムに通う。夏休みになると、親が運動不足の子供に、短期のムエタイ教室に行かせたりもする。

ちょっとした村祭り、町のイベントで行われるムエタイの興行試合。賭け事大好きタイ人のおっさん連中は、テレビに、即席試合にと熱狂する。タイにおけるムエタイは、国民全体に占める生活密着度、そして、競技人口の割合が、とてつもなく高いということは、まず間違いないわけである。で、そんな中でも、テレビを見て、実際に試合を生で目にして、「僕も(私も)ムエタイ選手になりたい」という子供が出てくるのは当然のことである・・・。そこにあるのは、スター性、そしてヒーロー性。日本の子供たちが、「イチロー選手のようになりたい」と思う気持ちと同様のものである。

だが、それだけではない。タイは仏教の国。とりわけ、家族・親を大事で尊大なものとして子供が教えられ育つ国である。ジムに通う、将来ムエタイ選手を夢見る子供たちに、その理由を聞くと、「ポー・メー(お父さん・お母さん)に家を建ててあげたい・・」とか、「金を稼いで家族の生活を安定させたい・・」といった涙ぐましい話が、当然のことのように、12、3歳の子供たちの口から自然と流れ出てくるわけである。

チャン君(14歳)がムエタイを始めたのは8歳のとき。ジムの子供たちの中でも1、2位を争う実力の持ち主である。彼は、チュンポン(タイ南部)の田舎から、親元を離れ~ジムでの住み込み生活を、この歳で、すでに6年も過ごしている。。ジム内にある、しなびれた4畳半ほどの部屋は、同郷から出てきた仲間たちとの5人雑居生活。今は学校が休みなので、朝~ロードワーク・練習、そして昼寝、、午後~ロードワーク・練習といった一日みっちりムエタイ生活を繰り返している。

ある日曜日、彼の試合を見に行くことになった。場所はバンコク郊外、とあるショッピングセンター屋上の特設リングでだった。引率役は、子供専門のジムトレーナー氏。ピックアップ車の荷台に、10人近くの子供を乗せ、まるでピクニックでも行くような光景だ。現場に着くと、そこは無料会場。その町の人々が、余興を楽しみに、わんさかと満員よろしく溢れかえっている。試合前、仲間の子供たちとふざけあったり、遊んだりして、子供の顔を見せるチャン君。出番が次の試合になったところで、ようやく準備開始するほどの余裕ぶりだが、、実は、彼は、この歳にして、すでに50戦以上の戦績をもっているのである。

試合は、チャン君の予告どおりの「得意のヒジ」での相手顔面KO!!恐るべし、子供ムエタイ戦士。

ジムトレーナー氏に聞くと、、こういった興行試合は、毎週日曜日、必ずどこかしらかで行われているとのこと。で、こんなチャン君でさえも、まだまだ経験が足りないとのこと・・汗)。彼は、この後、100試合、200試合と経験を積むことになる。そして、いろんな興行試合や大会を重ね、立派な戦士へと育っていく。それから、ようやく、ラジャダムナンとか、ルンピニーといった権威ある会場への参加資格、名誉あるチャンピオンを目指すことになるわけである。

また、興行試合に参加するジム所属の子供たちには、早くもムエタイ選手証(ライセンス)なるものが発行されている。それぞれが所持する、この選手手帳には、自分の顔写真ほか、身長・体重、これまでの戦績など・・こと細かな情報が記載されている。これは、いろんな興行試合に出る際の履歴書代わりとして、もちろん役に立つわけだが、、ちょっとした練習試合や草試合のようなものに出る際にも、いろんなジムの選手、相手と現場で直接交渉し~試合を組むときにも活用される。

そして、どんな試合でも、どんなときにでもいるのが賭けを仕切るオッサンである。観戦する大人たち、そして、引率のトレーナー氏でさえ、ジムの子供たちの試合に、常に金を賭けている。もちろん、自分の所属ジムの子供が試合に負けたとなると、必然的にオッサンも賭けに負けたことになる。で、(実際)その怒り方の理不尽さといったら、すさまじい・・汗)。。そして、興行を主催するスポンサーから出るファイトマネーのほか、選手たちには賭けで勝った観戦者たちからのおひねりも出ることになる。究極の弱肉強食の世界ではあるが、子供戦士たちは、そんな大人の世界の事情(都合)さえも、十分承知しているのである・・。おそるべし、タイ人社会。

タイの国技ムエタイ。その中でも、国が誇る最強と呼ばれる戦士たち。彼らは、その密なる競技人口の枠の中で、子供~大人になるまでの徹底した育成システムを経験する。そして、自分の夢だけでなく、田舎の親、家族の思い、生活・・。また、そこで狂喜する大人たちの賭け情事さえも一身に背負い、、狭きピラミッドの頂上へと上りつめた鉄人なのである。

 

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