2014年5月8日、タイ入国管理局は外国人がビザ(査証)なしでタイへの出入国を繰り返す行為(いわゆるビザラン)を禁止すると発表した。日本人の場合はビザなしでも30日以内の滞在が認められており、これまではタイ近隣諸国との陸路国境にて出入国を繰り返せば長期滞在が可能であったが、現在は陸路でのビザラン行為は原則的に禁止。また今月8月12日からは空路に関しても規制対象となり、ビザランに対する取り締まりを更に強化していく模様である。今回の規制については数ヶ月前に起きた航空機失踪事件で現在も行方不明となっているマレーシア航空機においてタイで偽造したパスポートを所持していた搭乗者がいたとされる事実などから海外諸国向けの信用回復か?といった理由もあるようだが真相は定かではない。
これまでにもタイの滞在ビザに関してはノービザでの90日ルールとか、タイ周辺国のどこそこの大使館がビザ発給に厳しいだの緩いだのと、アバウトなお国柄だけに規制状況が目まぐるしく変化してきた経緯がある。また、その時の政権次第みたいなところもあり、そもそも外国人の長期滞在者へのビザ規制が厳しくなったのは2006年以降のタクシン政権からであり、一方、民主党のアピシット政権時は当時のデモ騒ぎから観光客を呼び戻す為に観光ビザ無料化という時期もあった。
また、各タイ大使館の受付係官の裁量次第みたいな雰囲気も大いにあるのが現実である。ただ、総じて言えば、ビザランという行為は観光客や長期滞在者にとってはお得であるが、タイ国としては一銭にもならないし、金が流れるところはビザラン代行業者ぐらいである。結局は観光ビザなり、それぞれに見合った滞在ビザを申請して金を落としてくれという話なのだろうが、今後もまた状況を見て対応していくしかないようである。そんな折、現在3年近くタイに長期滞在している知人はこれまで周辺国で観光ビザを取得したり、最近ではビザラン代行業者を利用して陸路でのノービザ滞在(30日)を毎月繰り返していたが、先日、御用達のビザ会社に行くとビザランサービスがなくなっていたと、あわてて連絡してきた。
諸々事情を説明した後、彼はラオスのビエンチャンに観光ビザを取りに行ってきたようだが、結局、これまで複数回に渡り観光ビザ取得を繰り返していたため、一応今回はダブルビザを取得できたが、ついに警告の赤スタンプを押されてしまったようだ。(以下)
【Remark】 The holder of this passport travels to Thailand under a tourist visa several times which may result in the refusal of a visa in the future.(赤スタンプ)
要約すると、「あなたは観光ビザを数回取得しているため次回は拒否されるかもしれませんよ」といった内容である。また同時に以下のような青スタンプも押されたようで、「次回申請する際はタイの居住地と収入(預金)の証明が必要」といった内容である。
Proof of residence in Thailand & financial income are required next time.(青スタンプ)
とりあえずダブルを取れたので半年間の滞在は大丈夫だが、次回は必要書類を用意して再び観光ビザにトライするのか、あるいはパスポートを切り替えるのか、はたまたEDビザにするのか、今後様子を見て考えるそうだ。ちなみにEDビザに関しては以前からタイ語学校に行かずとも取得可能な代行業者があるが、最近は取得者が増えたせいか取り締まりも厳しくなったようで、友人から聞いた話によると、EDビザで長期滞在していた欧米人が自国に一時帰国した後、タイへ再入国しようとしたところ、空港の入管でタイ語を話せるかなど諸々尋問された上、彼は片言のタイ語しか話せなかったことから再入国を拒否されたというケースもあるようだ。
今後EDビザを取得して滞在する人はちゃんとタイ語学校へ通うことを第一に考慮した上でビザ申請した方が懸命なのかもしれない。また代行業者を利用する際もこれまでの実績や最近の取得状況などを確認し、本当に信用できるかどうか判断することが重要であろう。とにかく観光ビザを取得できなくなってEDビザへと移行する人が今後も増えてくれば、規制は更に厳しくなっていくことが考えられる。
また、別の知人はカンボジアのプノンペンにカジノがてら頻繁にビザ取りに行っているのだが、毎回、現地のビザ代行業者を利用しているようで、先日行った際もシングルビザであるが全く問題なく取得できたようだ。というわけで、各人のパスポート状況や、各大使館受付係官の裁量次第、また申請者の受け答えや態度にもよるので、現状ではどこのタイ大使館が厳しく緩やかなのか一概に言えないが、ラオスのビエンチャン、サワンナケートしかり、ビザ取得を複数回繰り返しているような人はビザ代行業者や大使館前の現地業者を利用するなど、慎重に行動した方が懸命かもしれない。(但し最終的には自己責任で判断すべし・・)
というわけで、在住者やビザ代行業者など現状を聞くところによると、年に数回程度しかタイに来ていない人でも空港の入管審査で別室に連れて行かれて滞在目的や日数など細かくインタビューされたとか、EDビザや観光ビザを取得していても執拗に尋問されたなど、現在ビザ規制と取締りが強化され厳しくなっているのは間違いないようだ。そしてそんな中、なるほどと思わせる興味深い話もある。それは来年2015年を目処に実現化される予定のASEAN(アセアン)経済統合である。それに伴いヒト、モノ、カネとあらゆるものの流通が自由化される。そして、ASEAN加盟国の関税やビザは撤廃(緩和)されるという話だ。
また、タイはASEANの中心部に位置しており、近年の経済成長率からも分かるように、今後は加盟国のリーダーというかお手本になるべきポジションにいるのだ。そんなわけで、統合前に規制を強化して不安要素を一掃しつつ、それまでに小遣い稼ぎというのが本当の目論見なのでは?という話である。うーむ。。ただ、アセアン統合で加盟国間のビザが撤廃(緩和)されるのは当然の流れとしても、それ以外の外国人のビザに関しては同じく緩和されるのか、あるいは厳しくなるのか。共同体となれば益々観光客が増加し、アジアに多くの人が往来することになるだろう。
そうなるとアセアン間を自由に行き来できるフリーパス(共通ビザ)のようなものが新たに出来るのだろうかなどと期待感を抱きつつも、一方では、これまでタイに多くいたようなビザランや観光ビザ取得を繰り返して長期滞在していた類の人たちは要らないという話になるのかといった懸念が浮上するのも確かである。そう考えると今後は長期滞在のビザに関しては更に厳しくなるのかもしれないし、結局はそれぞれの条件目的に見合ったビザを取得するように規制強化していくのかもしれない。
とはいえ、アバウトなお国柄が容易に変わることなど全く想像できないし、ワイロ的な概念も簡単に根絶することは出来ないだろうし、今後の政権次第でもあるだろう。いや、最近のパタヤ市内での警察の取り締まりの多さから見るに、クーデター以降の観光客減少、更にローシーズン期間中も相まって、ただ単に今現在小遣い稼ぎに奔走しているだけで、またハイシーズンがやってきて観光客が増加する時期になると、空港も混雑するので入管でのチェックもいちいち細かくやるわけにはいかないだろうし、なんてことも想像してしまう次第である。
さてはて、来年2015年中には現軍事政権から民政へと移行しているだろうタイランド。いったいどうなっているのだろうか。ただタイ好きな外国人としてはこのままアバウトでいい加減で居心地の良い癒しのサバイ空間がなくならないよう祈るだけである・・・。
→【在タイ日本国大使館】 ビザランに対する規制強化
→【在タイ日本国大使館】 タイ入国の際の必要所持金