ある寝付けない夜のこと。何がきっかけか、彼女と二人でオバケの話になった。僕は、もともと怖がりなのだが、今まで生きてきた中でオバケというものを見たことがない。かと言って、信じないかといえば、その辺の人よりは信じる部類に入る。
子供の時には、学校で「コックリさん」や「キューピットさん」の類のものを一通りやってきたし、つのだじろう氏作の「うしろの百太郎」を読んで、その気になり、自分の背後霊(守護霊)なるものに交信したこともある。(もちろん、失敗に終わったが・・・)
そして、僕と彼女は、そういう僕の怖がりな話から、幼少期の遊び体験、はたまた友達から聞いた心霊話など二人の持っているネタを、存分に語り合った。
タイ語でオバケのことは「ピィー」という。この発音が難しいのだが、ややこしいことの一つに、年上などを呼ぶときの「呼称」も似た発音で「ピー」というからである。オバケの意味が「ピィー↓」と語尾の発音を下げる。一方、年上の呼称の意味は「ピー↑」と語尾を跳ね上げる。
日本人にとっては、覚えるのが非常に面倒くさいのだが、まあ、我々は日本人だからしょうがない。まあ、そんな話は別として。彼女の田舎には、「ピィー↓」がいっぱいいるというのだ。また、パタヤには「ピィー↓」が少ないとも言う。(そんな・・地域によって数なんて関係あるのか?)
彼女いわく、タイ人は霊感が強い人が多く、だいたいの人は霊体験をいくつかは持っているらしい。そして、家に住みついた「ピィー↓」とは、家族ぐるみのように付き合う強者もいるそうだ。そして、僕は、恐れながらも彼女に聞いてみた。
ボク: 「ねぇ、うち(僕の住んでいる家)で、ピィー↓見たことある?」
彼女: 「ネーノーン!(もちろん)」
ボク: 「・・・(冷汗)」
彼女の話だと、僕のうちには 「欧米人の子供の霊」、「タイ人の老人男性」が基本的に住み着いていて、たまに他の「ピィー↓」たちにも、お目にかかることがあるらしい。でも、そんなときでも、僕は隣りで爆睡しているとのことだった。(苦笑) まあ、とにかく、そんなとき、彼女はどう対処するのかと聞いてみた。彼女の答えは、「相手するのが、キーキアット(めんどくさい)だから放っておく」とのことだった。(恐るべしタイ人)
そして、この日を境に、僕はヒマを見つけては、彼女に「ピィー↓」を見たか尋ねるようになった。そして、ある朝のこと。
彼女: 「昨晩、日本人のピィー↓を見たワヨ」。
ボク: 「エッ!まじ?それで、それで?」
彼女: 「中年男性で、何か私に話しかけて来たんだけど、日本語で何言ってるか分からなかったから、とりあえず日本語でウ・ル・サ・イ!と言ったらどこかに行っちゃったワ」。
ボク: 「・・・(苦笑)」
今持って、タイ人の感覚はつかめない。