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辰吉ジョーとタイランド

投稿日:2008年10月28日 更新日:

2008年10月26日(日)、タイはバンコクで辰吉丈一郎選手(38)の試合が行われた。前日までは、僕も、友人数名とバンコクまで、試合を見に行こうと思っていた。それでも、ネットや格闘技関連の情報筋からは、中止」になりそうな気配も漂っていた。試合当日の朝、、最終チェックにと、先ずはネットをいろいろ検索してみる。JBCだの、WBCだのが反対文書を送った経緯。それでも、タイのプロモーター側は、「選手に保険をかける」。「ドクターをつける」。という理由で試合開催を明言していた。

前売りチケットはすでに売りさばいている。普段は、ムエタイで観光客やタイ人相手に興行を重ねているスタジアムに、元世界チャンピォン・・。興行主にとっては、おいしい話だ。「今日、やるのはほぼ間違いない!でも、僕は行くのを止めた・・ゴメン」。僕は、友達に連絡を入れた。(辰吉ファンの友達は行ったので、後で事後報告を聞くつもり・・)

試合が決まった時から、中々、対戦相手は分からなかった。そして、ジムの反対など様々な要因から開催が危ぶまれていたわけだが、本人が現地入りした数日前ぐらいから事態は開催の方向へ向かっていった。その勢いが、開催のほうへと流れていった。ただ、相手が日本で過去に5戦5敗している若手ボクサーで、かませ犬だの、何だの書かれていては、行く気も失せてしまう・・。「10回戦??」 そして、この言葉に一番引っかかってしまった。5年ぶりの復帰戦で、かつ、コンディションや身体が心配されている状況なのに、10回戦?いわば調整試合のようなものなので、4回戦か、6回戦というんだったら、話は分かる。10回戦というのは、元王者としてのプライド、辰吉選手サイドの主張だったんだろうが・・。

プロモーター側にしてみれば、JBC、WBC、ましてや所属ジムまで反対しているほど深刻な状況。でも、興行自体は稼げるおいしい話。でも、ケガさせて大事になってしまっても、困る。となると、10回戦で試合をやるとしたら、長引かれるのだけが、一番やっかいな事態なのである。そして、タイ人的に単純に考えると、「面倒はゴメンだ、でも、興行は行いたい」。それだけが答えだ。となると、必然と弱い相手にして、早く終わらせてもらおう。そして、次の興行に繋げよう・・。となるのが、最も賢いプロモーター心理というやつだろう。(多分)

と、あれこれ想像してしまい、「ごめん、多分、試合が早く終わってしまいそうだから・・」と、僕はバンコク行きを断ったのだが。おそらく、興行主も、試合を決めた時点では、ここまで大事になるとは思わなかったのではないだろうか。そして、会場には日本からの熱狂的ファンも含め、400人ほどの日本人がリングサイドを埋め尽くしたらしい。何はともあれ、復帰戦であれ、引退試合であれ、かませ犬であれ、何だっていい。
諦めることを知らない男の哲学、生き様、その姿見たさ・・だけに、大勢のファンはわざわざタイまで駆けつけてきたのだ。そう考えると、いまだ辰吉選手はとてつもないカリスマ人間である。

本人にしたら、今回の相手では、納得がいかない、ムズがゆい部分もあったことだろう。(多分)それでも、元世界王者が、ムエタイの会場とリングでの試合を、プライドを捨ててまで受け入れたことに意味がある。いや、プライドより、それは純粋なボクシングへの思いだけだろう。因縁のライバルであったウィラポンとも、今では親交が続いているという。彼との関係も、今回の試合開催を後押しした要因と考えられるが、今後、辰吉選手とタイとの関係は、まだまだ続いていきそうだ。

いつ、彼に引退の日が来るのかは知らない。ただ、今回の試合が開催できたこと自体に意味がある。本人は、まだまだ現役続行でヤル気満々な様子。そして、タイには、適当でいい加減だが、それを受け入れるだけの寛容で寛大な器がある。あとは、周りの状況次第・・。ただ、浪速のジョーは今後も自分の哲学を貫き通していくだけ・・なのだろう。一連の流れを見て、そう感じた。

 

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