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地獄か否か!?山崎パン工場バイト潜入記(後編)

投稿日:2021年11月26日 更新日:

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バイト2日目も菓子パン課(バターロール担当)

バイト2日目、「今日も昨日と同じ仕事だったらいいのになぁ…」と思いながら出勤してみると、同じく菓子パン課に配属された。「やった!これで今日も楽勝だぜぃ!」意気揚々と着替えを済ませて、諸々の作業を終えると、早めに菓子パン課へと向かい、室内に置いてあるタイムシート(就業報告)に諸々の事項を記入する。食堂で無料の菓子パンを一つ食べて腹ごしらえすると、休憩室で少し時間を潰した後、トイレを済ませて準備OK!少し早めの15分前には、再び菓子パン課に行き廊下で待機する。そのうち僕の他にも何人か青帽子のバイトが集まりだした。すると白帽のスタッフ社員が部屋から数人出てきて、僕ら一人一人をマジマジと見比べながら品定めするように、誰をどこへ配属するか思案している様子。

「〇〇さんは△△をやったことがありますか?」名前を呼ばれて、どこの担当か分からずに「昨日が初めてのバイトで今日が2日目です。昨日はバターロールの包装チェックをしたんですが…」と返答すると、すぐに別の社員が僕に声をかけてきた。「バターロールやったことあるんですか?」「はい、昨日やりました」「じゃあ、今日も同じ場所でお願いします」

望んだ通りの仕事場を手にして、僕は2日目も難なく作業をこなした。まったく同じ単純作業とはいえ、不安だらけだった初日とは打って変わってスムーズに仕事に入り、一度もミスすることなく淡々と検品しながら不良品の数々をこなした。「この同じ単純作業を毎日、数ヶ月続けるだけで、タイの田舎に家が建つ。パンを触り続けるだけで家が建つ。ああ、なんて素晴らしい仕事なんだ。パーフェクト!楽勝!これで計画が立った…」気軽な軽作業を楽々とこなしながら、僕は頭の中であれこれ思案しては気分上々(有頂天)だった。

バイト3日目以降も菓子パン課が続くが…

その翌日、バイト3日目も同様に菓子パン課でバターロール担当だった。だから、もはやこの製造ラインは他にやり手がいない(毎日担当するのは俺なのだ)と半ば自負するように勘違いしていた。その事実を知ったのはバイト4日目のことだった。もうすっかりバイト生活にも慣れてきて、いつものように楽勝気分で出勤し、アルバイトルームの受付で名前を告げると、その日も同じく菓子パン課だった。だが、菓子パン課に行くと、それまで2日連続で僕を指名してくれた社員はいなかった。その日のバターロール&ミニパン担当らしき社員が、並んで廊下に待機していた僕らバイト数人の中から2人の女性を指名した。1人はベテラン風のおばさんバイト、もう1人は大学生風の若い女性で(僕も初日につけていた)初心者マークのバッジをピンク帽子の脇につけている。

そこで僕はようやく思い至った。「ああ、その日のバイトの担当(仕事)を割り振り決めるのは社員たち。ということは、その社員たちと仲良くなったほうが(コネを作っておいたほうが)自分が希望する仕事を優先的に回してもらえるのではないか?」ということを…。実際ベテラン風のおばさんと、その担当社員は仲良さげに会話しながら廊下を歩き、仕事場へと去っていった。「ああ、俺の大事なバターロールが…」そして、勘違い(思い違い)はそれだけではなかった。バターロールはやはり誰でもできる初心者向けの仕事だったのだ。僕はもう3日もバターロールを担当していた。そこはもう卒業のようだった…。

忙しないランチパック製造ライン

最後まで廊下に残るようにして、連れて行かれたのは、4日目にして初めてとなる「ランチパック」の製造ラインだった。新しい仕事場を覚えるように、スタッフ社員の後ろをついて歩く。室内入口にある手洗い場で洗剤をつけて両手をゴシゴシ念入りに洗うと、その後は恒例のコロコロタイム。最後にアルコール消毒液が溜められたボウルに両手を突っ込み、消毒液を手に馴染ませる。その一連の衛生管理をこなさないと入場できない掟(ルール)だ。ようやく室内に足を踏み入れると、入口付近に置いてある備品棚からゴム手袋を取って両手にはめるよう指示される。今日は直に食品を扱う作業のようだ。それから、初日同様いきなり現場へと放り込まれた。室内の様子をじっくり観察する間もなく、さっそく連れて行かれたのは、商品製造の最終工程である包装チェックだった。と、検品作業はバターロールで経験済だから楽勝だと思っていたのもつかの間、ここは作業内容が全く異なっていた。

見ると、ものすごい勢いでできあがって流れてくる大量の商品(ランチパック)をテキパキと拾い集め、「番重(ばんじゅう)」と呼ばれる業務用ケースにどんどん並べて入れるだけの作業のようだ。「タテヨコ4個×4列ずつで16個、これを上下2段に重ねて計32個で1セットね」「取って入れるだけじゃなくて、一つ一つちゃんと触って空気漏れがないかもチェックしてね」「賞味期限の印刷表示も確認してね」「中身の良し悪しも確認してね」「ちょっとやってみて」と言われて、社員と代わって作業をやり始めてすぐに僕はテンパってしまった。僕のやっている作業を見ながら、「ああ、そうじゃない…こうやって…」と早口であれこれ指示してくる、こうるさいメガネ社員の要求に応えようと必死で格闘していると、すぐに処理しきれずに、大量の商品が受取口の容器の中に溜まり始めた。「ああ、向きが違う…ダメだ…使えない…変わって!」僕は3分と持たずにメガネ社員から戦力外通告を受けて、別の場所へと回されてしまった…。

口うるさい社員からの指示とアドバイス

次に回されたのは、製造ライン工程の最上流で、食パンの塊を番重から取り出して、機械に補充する作業だった。室内を中央から縦半分に区切った左右それぞれに2台の大きな機械が直列で並ぶように設置されており、僕が先程やらかしてしまった包装チェックの最終工程は、視界の10数メートルほど先である。その左右に並んだ2台のランチパック製造マシンそれぞれに、長くて大きい食パンの塊を補充し続ける。(番重の中に収納されている)食パンの塊は簡易的なビニール袋に入れられており、片方の口が開いているので、それを機械の補充台に乗せて、ビニール袋の閉じているほうを一気に引き抜くように引っ張ると、中の食パン塊を簡単に取り出せて、首尾よく補充できるという流れだ。しかし、その食パン塊は上下焼き色が異なっていて、右のマシンは焦げているほうが上向きでセット、左のマシンは焦げているほうを下向きでセットしなければならないのだ。(なんで同じランチパックなのに作り方が違うんだよ…)

とりあえず、2斤ずつ番重から取りだし補充していたら、すぐに社員から「2個ずつじゃ、間に合わないよ!4個ずつやらなきゃ!」「そんなやりかたじゃダメ!」などと逐一ツッコミが入る。そして、僕に見せつけ教えるように、両手で2斤ずつ一度に4斤の食パン塊を番重から豪快に掴んで取り出すと、あっという間に全ての袋から引っ張り出して機械に補充していく。まさに職人技である。僕も同じように見よう見真似でやってみるが中々うまくいかない。それに片方のマシンだけならいざ知れず、左右のマシンに常時対応しながら、体を動かさないといけないのだ。左右のマシンの距離はたったの3~4メートルほどだが、その間をいちいち行き来するのが面倒くさい。

それぞれの機械の手前に置かれた番重から食パン塊を取り出しては補充する作業を延々繰り返す。昨日までのバターロールとは全く職種が違うようだった。慌ただしく動き回る全身作業ですぐに汗だくになり、マスクの中はぐしょぐしょに濡れ、それでもようやく作業に慣れてきたかなぁ…と一息つけたタイミングで、室内の壁にかけられた時計に目を向けると、まだ10分ほどしか経過していなかった。ガビーン!?僕は地獄のバイトと言われる所以を少し垣間見たような気分だった。

番重(ばんじゅう)の取り扱い方

さらに面倒くさいのが番重の取り扱い方だった。「番重がきちんと積まれてない!」「ちゃんと上の段まで積んで!」「番重の下には専用の台車を敷いて!(直で床に置かないで)」などと、社員から度々ツッコミを入れられ、指示される番重について、僕は何も知らなかった。それまで3日間働いたバターロールでは番重の使い方など、誰も教えてはくれなかった。番重には細かい使用方法(条件)があったのだ。

番重は商品を入れるプラスティック製の業務用ケース(長方形の重ね箱)で、縦部分に持ち手がついており、横部分のツラ(側面)に「世界のパン☺ヤマザキ」という赤い文字(ロゴ)が印字されている。この文字が表示されたツラを合わせて、商品が入っている番重は同方向に重ねて積み重ねる。一方、空の番重の場合は縦と横を交互に重ねながら積み重ねる。また番重は計25段まで積んで1セット。などと取り扱い方が細かく決まっているのだ。

食パンを取り終えて空になった番重はいちいち交互に積み重ねていかないといけないし、食パンが入っている番重がなくなったら急いで隣の置き場から運んでこなければならない。これが計25段と高さ2メートル近くまで積まれているので、上段の番重を取り出すのも運ぶのも、倒さないように慎重に行なわなければならず一苦労だった。まあ、数日経つと慣れてしまったのだが、はじめは訳が分からなかった…。

立ちっぱなしの製造ライン地獄

食パン塊を補充し続けて、1時間ほどが経過した頃、再び違う場所へと移動になった。僕は適役ではなかったのか、食パン補充係は、あれこれと口うるさい社員が担当するようだった。僕は製造ラインの中程にいたベテラン風おばさんと作業を交代することになった。彼女の休憩時間の代わりなのだろうか。作業内容をおばさんに教えてもらう。目の前のベルトコンベアは手前と奥の(上下)2本のラインでできており、食パンの耳がきれいにカットされ中身が詰められた商品(ランチパック)が、その2本のライン上に乗せられて同時に流れてくる。その上部ラインに流れてくるパンを右手で取って、下部ラインに流れているパンの上に重ねて、余った左手でフィットするように軽く押さえる。その後、すぐ次の工程で包装されて、できあがりという流れである。

先程までの作業とは打って変わり、今度はあれこれ体を動かさずに、処理するのに最適の所定位置にじっと立ち続け、ただ目前に流れてくる商品を右手で取っては重ねて、左手で押さえるの繰り返しだ。目視でチェックするのは「商品の端が破れていないか(中身が漏れていないか)」「パンの耳が残っていないか」「焦げがついていないか」ぐらいのもので簡単な単純作業だった。とはいえ、10cmほどの間隔に並んだパンが、次々延々と流れてくるので、5秒ほど上部ラインをほったらかしにしてしまうと、すぐ先の廃棄ボックスまで流れていって落ちてしまうので気が抜けない。長時間じっと顔を下に向けた前かがみ状態で作業するので、首や肩がすぐに痛くなり始めたが、ジリジリ痛くなるのを我慢していると、そのうち麻痺するように、慣れていくのであった…。

5日目からは和菓子課に配属

バイト5日目、「今日はどこかなぁ、ランチパックはもう嫌だなぁ、やっぱりバターロールがいいよなぁ…」などと不安感と期待感を同時に抱きながら出勤すると、まったく予想外の「和菓子課」に配属された。もう、菓子パン課は卒業ということなのだろうか。新しい仕事場に行くと、和菓子課は菓子パン課より多くのバイトたちであふれていた。和菓子課に配属された場合は、室内に置いてあるタイムーシートに記入したら、就業開始の10分前までには作業現場まで直接自分で足を運び、集合するのがこの課の取り決めのようだ。先ずはその日担当の班長(社員)による軽い挨拶から始まり、作業についての注意事項など簡単な説明があって、みんなで軽く準備体操。なんかの企業ドラマで見たような光景だ。

それから班長が計10人以上いるバイトたちを一人一人チェックするように見比べながら、仕事を割り振っていく。僕は「今日が初めての山パンバイト」という若い男性と2人で組まされて、とりあえず室内の掃除と機械の拭き上げを指示された。その後は、ダンボールから小豆あんの業務用パックを取り出して、はさみで切って袋を開封し、ビニールシートを敷いた深めの青番重に計3パックずつ入れて、ゴム手袋をはめた手でこなしながら細かく均一にするという準備作業をして、およそ1時間が経過した。そして、その作業が終了した時点で、僕ら2人には早めの食事休憩が与えられた。「いやぁ、今日はいい課に配属されたかもしれないなぁ、バイトが十分に足りているのかしら…」気軽な作業ばかりで、早い休憩時間をもらい、今日はゆっくり休養しながら仕事ができそうだと、僕はまたしても早とちりしたのだった。

残業必至の肉まん製造ライン

食事休憩から作業場に戻ると、22時過ぎから始まる「肉まん」の製造ラインに、初心者の男性バイトと2人組(ペア)で入れられた。生地に中身の具が詰められた「まんじゅう」と呼ばれる肉まんの元が、すぐ横の機械で製造されて目の前のベルトコンベア上を流れてくるので、それを2人で拾って網に並べる作業である。ベルトコンベアの脇に作業台を設置し、互いがその作業台を挟んで立って向かい合い作業する。1人は網担当で、およそ50cm四方の網を(傍に重ねて置かれた)網棚から取って作業台の上に補充する役目。もう1人はその網の上に敷き紙を敷く係だ。そして、2人でまんじゅう(肉まんの元)をベルトコンベアから取っては、敷き紙の上に整然と並べていく。そそくさと網1枚分のまんじゅうを全て並べ終えると、網担当は傍に置いてあるオーブン用の棚までそれを運んで収納(セット)する。網担当は網が少なくなってくれば、逐一補充しないといけないので、もう一方は敷き紙を敷きながら、網担当のまんじゅう拾いをサポートする。2人(ペア)が助け合いながらやらないと、そのうちミスしてしまう作業だ。

というのも、網の補充や、並べ終わった網を棚にセットしている合間にも、まんじゅうは次々製造されて、目の前のベルトコンベアを流れ続けているからだ。全て拾いきれずにそのまま流してしまうと、すぐ先の廃棄ボックスへと落ちてしまう。それに肉まん(普通サイズ)の場合は網の上に計16個(1人あたり8個ずつ)並べるのだが、これがミニサイズとなると計25個(1人あたり12.5個ずつ)並べなければならないので、あまり息をつく暇がないのだ。はじめは「楽勝ですよ♪」と自ら網担当を買って出た若者も、数時間が経つとギブアップして網担当と敷き紙担当を入れ替わることになった。そして、その作業はそれから5時を迎えるまで計7時間、延々ノンストップで続いた。さすがに長時間の作業なので、合間にトイレ休憩を数回もらったが、全身への疲労度はそれまでの比ではなかった。

終業まで残り1時間程と迫ったところで、班長が僕らの元へやってきて「どちらか残業をお願いできませんか?」と尋ねてきた。重労働ですっかり疲弊気味の若者は「すみません、明日早いもので…」とすぐに断りの返答を口にした。僕は幾らか迷ったが、「なんとかお願いできませんか…」と班長に懇願されて、初めて残業することになった。その日の残業時間は1時間半で、解放されたのは6時半だった。

地獄バイトの深淵を知る日々……

それから、バイト6日目、7日目、8日目と、、、5日目から4日連続で和菓子課に配属されるようになった。1日だけ他の商品(菓子パン類)の製造ラインに回されたが、毎日のように肉まん担当になった。ベテランおばさんとペアを組むことになると、僕は男だからと気を使って網担当を自ら買って出ることになった。肉まんは10月からの売れ筋商品らしく、夜勤だといつも22時過ぎから製造が始まるのだが、受注量が多いのか、毎日決まって残業があるようだった。6日目はさすがに連チャンなので断りを入れたが、7日目にまた残業したら、3時間もかかって終わったのは朝8時だった。8日目にもなると、首や肩の疲労度は相変わらずだったが、さすがに立ちっぱなしの連続勤務のせいか、左足の股関節が使い物にならなくなってしまった。工場内の廊下で足を引きずって歩いている人を度々見かけていたので、僕はてっきり「足が悪い人とか障がい者のような人も働いているんだなぁ…」とふと感心していたのだが、実はそうではなかった。僕は自分が足を引きずらねば歩けないほど股関節を疲労して、ようやくこのバイトの深淵を覗いたような気がした。

だから、バイト9日目は「さすがに今日も肉まん担当で残業はヤバイ…」と思い、出勤時に受付(社員)のおばさんに「今日はちょっと筋肉痛がひどくて、菓子パン課じゃダメですかね?」と思いきって希望を告げてみると、「いいですよ」とあっけない答えが返ってきた。「やったぜ!言ってみるもんだな。今日は久々に気軽なバターロールにならないかなぁ…」と意気揚々、久しぶりの菓子パン課に赴くと、期待通りのバターロール担当になった。だが、お得意の包装チェック作業に勤しんだのもほんの数分ほどで、初心者らしき女性バイトを連れてきた社員が、非情にも僕と彼女の交代を告げた。「〇〇さんは別の所に入ってもらいますので」「はい…」そして、僕を迎えに来た別の社員に連れていかれたのは、それまでで最も過酷な現場であった。

もちもちパン生地を補充する肉体労働

「今から行く作業場は肉体労働で結構ハードな現場になるんですが…」「ええっ、そうなんですか!?」現場に向かう際、社員にはっきり告げられて、僕は菓子パン課で楽な仕事を得ようとしていた自分にバチが当たったような気分だった。そこはパン製造の最上流工程、パンの仕込みと成型を行う場所だった。「生地を直接手で触るので、腕を上まで捲ってください」そう指示されて、社員と同じように制服の袖を上腕部まで捲ると、手首につけていたタイ製のミサンガ(聖糸)を外すように指摘された。それから一通りの流れを駆け足で説明されたのだが、その作業内容はそれまでで最も複雑かつ大変なものだった。

さほど広くない室内には、所狭しと計5台のパン製造マシンが設置されている。簡単に言えば、それらの機械に生地を補充し続ける作業である。とはいえ、その工程がなんとも面倒くさい。まずは室内の隅に置かれたバカでかいバスタブのようなボックスに100キロ以上はゆうにある大きな生地の塊が入っているので、その生地の中に両手を突っ込み、そこから計8~10キロほどを目安に生地を掴んで持ち上げ、専用の器具(ヘラ)を使って切断して取り出す。脇に量りが置いてあるので逐一重量チェック。それから取り出した生地の塊を(2台置いてある)パンチングマシンに投入して成型する。窯のような大きなパンチングマシンの緑ボタンを押すと、機械がゴトゴトと大きな音を立てて、およそ1分ほどでお餅のような大きな丸いまんじゅうができあがる。それを5台のパン製造マシンに次々補充していくという流れだ。

僕の担当は生地をボックスから取り出して、パンチングマシンで成型して、パン製造マシンに補充し続ける作業。一方、社員はあんこやクリームなどの中身を補充しながら、機械を操作する役目である。そして、中身が詰まったパンの元(小さなまんじゅう)が次々生産されて、ベルトコンベアで隣の部屋へと運ばれていくという流れなのだが、その小さなまんじゅうの下には小麦粉が敷かれるので、機械に小麦粉を随時補充する作業も同時にこなさなければならない。さらに生地が入っている大きなボックスが空になると、それを隣の仕込み部屋まで運んでいってワックスがけして、新しい生地入りのボックスを持ってくる作業まである。その作業に数分かかるのだが、その間もパン製造マシンは稼働し続けているので、戻ってきた頃には計5台の製造マシンの生地はもうすでに残り僅かになっている。慌てて新しく運んできたボックスから生地を取り出し、パンチングマシンで成型して、生地を補充する。そうこうしているうちに小麦粉も頻繁に補充しなければならない。息つく暇なく、あたふたと計5台のマシンを行き来する。あっという間に全身汗だくになり、マスク内はぐしょぐしょに濡れ、これが今から8時間も続くのかと、僕はものの30分ほどで憂鬱な気分になってしまった。

社員も嫌がるガテン系の製造ライン……

とにかく最も体力を奪われるのが、バスタブのような大きなボックスから生地を取り出す作業だった。はじめは言われた通りに、見よう見真似でやってみたのだが、生地はモチモチ粘着質なので、中々うまく取り出せないどころか、要領よく取り出せないと、すぐに腕がパンパンになり使い物にならなくなってしまう。腕の力だけで持ち上げようとしても全く駄目で、先ずはどっしり腰を据えて、両手をボックス底部まで突っ込んで「ウォリャー!」という感じで生地を両手で抱きかかえるように掴みあげ、一気にボックスの上部まで持ちあげて淵に「ドーン!」と立てかけるようにして、専用の器具(ヘラ)で素早く切断しないと、大元の生地に全てを持っていかれてしまう。感覚的には生地に対して何かのプロレス技をかけているような作業である。僕はコツをつかむまでかなりの時間を要し、数人いた社員一人一人に声をかけては、その人なりのやり方を教えてもらうことになった。

その中で一番若手だった社員のやり方が僕に一番しっくりきた。作業がひと段落したところで、その社員とゴミ捨てに行く際に会話する機会があった。いや、部屋を離れたとたん、すぐに彼から話しかけてきたのだ。「ここの現場、最悪でしょう?」ってな感じで。「いやぁ、ここの作業はさすがに重労働でびっくりしましたよ…」「僕は今、入社2年目なんですけど、入社以来ずっとここなんですよ。初めの数ヶ月はもう腕がパンパンで全身筋肉痛になって毎日家に帰ったら寝るだけの生活でしたからね。でも、〇〇さんはすごいですよ。すぐにコツをつかんで出来るようになりましたからね。普通のバイトの人なら全く出来なくて、根を上げる人ばかりですから…」ここは社員が一度は経験させられる山崎パン工場の登竜門的な現場なのだろうか。激務ながらも何とか最後までやり遂げた後は、もう他の作業場ならどこでも構わないという気分になったのだった。

深夜の高時給を狙う常連バイトたち

結局、僕は計11日間連続でバイトに入ってみたのだが、もう二度とやりたくないと思うほど辛かったのは、生地補充の製造ラインだけだった。そして、当初は月に20~25日はやる予定だったのだが、それも無理だということが後に判明した。どうやら雇用保険加入の問題?とかで、派遣を通して単発でバイトに入る場合は月に10日までしか働けないという取り決めがあったのだ。それを教えてくれたのは、山崎パンで長期間働いている常連バイトの面々だった。月に10日までしか働けないのだから、単発でバイトに入る際は当然、時給や手当が高い平日をピンポイントで狙う。そうすれば10日働いただけでも約15万円ほど稼げるという話だった。また、昔は外国人労働者も雇用していたのだが、数年前に異物混入事件があったらしく、(それが直接的な原因ではないが)それから外国人を雇わなくなったらしい、という話など、長くいる常連ならではのバイト情報をいろいろ聞いた。

そんなわけで、今一度、総括して、山崎パン工場のバイトは地獄か否か!?僕の答えはやっぱり否である。結局のところ、中高年のおばちゃんでも普通に苦もなく働いているわけだし、8時間の単純労働で1万以上が約束されるのはやはりおいしい仕事だと思う。そう、単純作業であるがゆえに、身体が慣れてしまえば、どうってことはない。ふむ、というわけで、今後も時間があればちょくちょく高時給の日(夜勤)を狙って、小金稼ぎをしようと目論んでいる次第である。

●「マジかよ」「こんなに過酷とは」パン工場でバイトした実体験漫画

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