先日、久しぶりに「落ちる」夢を見た。それはアマゾンにでも迷い込んだような感覚で、僕は分けも分からず、うっそうとしたジャングルの中をひたすら突き進んでいる。ふとすると右手に身もすくむような断崖絶壁が現れた。見下ろす視界のはるか下には真っ青な大海のような湖が大口を広げている。と、その得もいわれぬ絶景に思わず心を鷲掴みされたような感覚を覚えた瞬間、僕の身体は宙を舞い、まっさかさまに急降下していった・・。「うぉーーー！！」。叫びながら落ちていく僕は、その時「これは死んだな。いやこれが死ぬ時というものなのか」と冷静に感じ、その一瞬の内に諦めとか別れ、感謝といった様々入り混じった感情に包まれた。
そして「ドッボーン！！」。一瞬、衝撃を感じたかと思うと、水中深くに引きずりこまれていった。しかし、死んではいなかった。その後、水上に浮き上がった僕はあっという間に渦巻く波に流され、そのうち陸地へと辿り着いていた。「俺は生きてるぞ！いや生きてて良かった」。そんな安堵感にも似た晴れ晴れした感情に浸っていると、、突然、隣に寝ている嫁にゆり起こされたのだった。「あぁ、なんてことを。続きが見たかったのに・・」。どうやら、嫁は僕の怒号やら叫び声の寝言に起こされてしまったようで、僕がうなされているとでも思ったのだろう。ま、それにしても、久しぶりに鮮明なカラーイメージのリアルな夢を見たので、寝ぼけ半分ながらも、身体への警告か？とか、雨続きの肌寒い天候のせいか？とか、はたまた潜在意識下の自分の本心とか、脳内を探索し答え探しな夢気分に浸っていると、嫁から一言。「落ちる夢はいいサインよ。宝くじを買わなきゃ、絶対当たるわよ。数字は何がいい？」などと相変わらずな言葉が返ってくるのであった。（ホロ苦）
ま、とは言え、その時思い浮かんだ数字は「694」。そして、その日市場に行ったついでに宝くじ（ロッタリー）売り場に寄って覗いてみると下３桁694を即発見。しかも、売店の親父が予想している数字の中にも同じく94の文字が躍っていた。なんてこともあり、久しぶりに２枚程買っておいたのだが、抽選発表を迎えた月初め。当選番号は「124025」で、下３桁が「940」、「554」、「291」、「873」。そして、下２桁が「58」という残念な結果。（当然か）と、「惜しかったー」とか「もう少しだったのに・・」とか相変わらず一喜一憂な言葉を繰り返すタイ嫁に対し「そうやって惜しいとか言ってる奴はその他大勢いるよ」などと突っ込んでいた矢先、嫁の妹が見事当てたという家族ニュースが飛び込んできた。つい先日10年目の結婚記念日を迎えた嫁の妹夫婦。最近ローンで購入した愛車のナンバーにあやかって下３桁狙いの「258」を５枚購入しておいたところ、見事、下２桁の「58」で的中！！ 2.000バーツ×５枚で計10.000バーツの配当金となり、嬉しい結婚10年目の記念となったようだ。（ふむ）
と、まぁ、こんな感じで周りで小当たりが頻発するもんだから、またやめられなーい、とまらなーい、宝くじ連鎖はタイ人社会で延々と続いていくのだろうが、特にうちの嫁の家族はまさに宝くじ大好きロッタリーファミリー。中でもダントツの的中率を誇るのが嫁の父親（ポー）で、専ら予知夢（正夢）での予想を得意としている。何でも夢の中で数字のイメージが現れるらしく、そんな時は「先祖が夢の中で教えてくれている」といった考えで捉え宝くじを購入するらしい。だから実際よく父親から「今度の宝くじは何番を買っておいたほうがいいぞ」みたいな電話がたまにかかってくるのである。（どんな親子関係だ・・）
そして、それだけに留まらず、普段から何かと数字や番号を見つけては、そこに意味を見出し、あやかって賭け事にいそしむタイ人。抽選発表がある毎月１日と16日は家族に電話連絡して、あれこれ宝くじ談義に花を咲かせる定例会のようでもある。愛煙家の僕にタイ嫁は「タバコを止めて（控えろ）」とか「タバコ代が勿体無い」とかよく口にする。そんな時、決まって僕は「だったらお前のロッタリー代はどうなんだよ！？」と返すことにしている。すると、テヘヘと笑ってごまかすタイ人の性質が顔を出す。何なのだろう。中毒性？脳内麻薬？アドレナリン分泌？よく分からないが、僕がタバコを止められない、いや止めたくもないのと、タイ人が賭け事を止められないのは根本原因は同じようなものなのかもしれない。
そして、それは共に身を滅ぼす刺激物でもあるし、すぐ手を伸ばせるところにある、ちょっとした人生のスパイスのようでもある。ま、必要悪とも言えそうだが、何事も理性をもって程ほどに・・という話ですかな。ただ、癒しのストレスフリー王国の所以は、この辺にあるのかもしれない。（サバイ主義♪）
