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パクワン男の暴力日記―タイ人オトコとタイ人オンナ

投稿日:2004年1月24日 更新日:

pakuwan

「●●さんとこのご主人って本当に古いタイプの人よね」。「うちの女房には頭が上がらなくてね」。亭主関白にカカア天下、いつ誰が言うようになったのかは知らないないが、日本で男女が恋人同士、あるいは夫婦になったときによく使われる文句だ。そして、そんな昔ながらの言葉が、ここタイにも存在するのかしないのかは、ボクには知る由もない事だが、ただ、タイ人のカップルを見ていると、いつも非常に興味深い思いをするのだけは確かである。

「とにかくサヌック(楽しい)なことが好き」、タイ人という人種にはいつも笑わされる。「時間を守らない」、タイ人という人種にはいつも頭を悩ます。そして、「何につけてもキーキアット(めんどくさがり)」、タイ人という人種にはいつも首をかしげる。

「しょうがねえなぁ」、「全くタイ人って奴は」。周囲でよく飛び交う言葉。もちろんボクの周りのタイ人に関しても然りで、そんな現象はもう慣れてしまった。というのが正直な気持ちである。日本人が「恥ずかしがりで遠慮がちな民族」と言われるように、タイ人にもタイ特有の民族性があるのは当然のことだからだ。そして、このタイ人の性格。同人種間、つまりタイ人同士の間では許されることのようだ。

「サヌック好き」、「時間にルーズ」、「キーキアット」。これらの言葉を解すれば、自己中心、放漫、わがまま。『タイ人はその場を自分の思うように生きる=単純な考えを元に生きている民族』 というひとつの答えがでてくる。それはもちろん恋愛に関しても同様に言えることで、彼らが必死に女を口説くとき、結婚するとき、子供を産むとき、そして別れるとき、全ては単純な考え、発想の上で展開されていく。ボクには、それが子供のままごとのように見えて仕方なかったが、その通り。彼らは童心的な気持ちで、恋愛を楽しんでいた。これは、あるタイ人カップルの恋愛日記である。

ヨン(仮名=23歳)。彼はパタヤのあるコンビニエンスストアで働くごく普通の青年である。平凡な家庭に生まれたヨン。学もなく、特に就きたい職もない。タイ人にとっては至極ありふれた人生模様である。そして、いまだ独り身のヨン、彼は兼ねてからひとりのタイ人女性に、淡い恋心を抱いていた。

マイ(仮名=20歳)。彼女はヨンの働くコンビニ近くのゴーゴーバーで、ウエイトレスをしている。結婚遍歴なし、ペッチャブンの片田舎から出てきた彼女の夢は、美容師になることだ。両親も今だ健在、共に職を持っているため、彼女には家族への仕送りの理由はない。仕事で貯めたお金は、美容師専門学校に行くための資金としてだった。

マイは、生まれながらに洗練された都会の雰囲気を持っていた。そして、細身の体型と童顔、色白の肌が世の男たちの目を立ち止まらせた。店に来た客の中にも、何とか彼女と夜を共にしようという考えの持ち主は多かった。そして、当のマイ自身もこういう業界で仕事をしている以上、また、早く学費を貯めて仕事を辞めたいという考えから、自分の好みの男、たくさんのチップをくれる客とだけは、拒むことなくホテルへと連れ立った。

ヨンとマイの出会いは、マイがパタヤに来た初日のことだった。お店の休憩時に、ヨンの働くコンビニに買い物に来たマイ。ヨンは一発で彼女に一目惚れした。歓楽街にある店だけあって、これまでは来る客も観光客、また、売春婦が多かった。厚化粧の女、淫らな格好をした女、酔っ払いの女…。そんな中、店に現れたマイはとても新鮮だった。パタヤで生まれたヨン、観光客に汚染され、売春婦で埋め尽くされた街で育ったヨンにとって、マイは初めての衝撃的な思いをした女性だった。

「出身はどこ?」。「どこで働いているの?」。「彼氏はいるの?」。毎日のように休憩時、あるいは仕事帰りにコンビニに立ち寄るマイに、ヨンは多くの質問を投げかけた。マイ自身も、普通に仕事をしているヨンに対しては好意的だった。

二人は出会って一ヶ月もすると日中デートを重ねるようになった。そして、いつしか二人は恋人同士になった。ヨンは彼女に尽くした。お菓子の差し入れに、ちょっとしたプレゼント。店が休みの日は、彼女の働くゴーゴーバーに足を運んだ。二人の休みが合えば、映画館、ショッピング、寺院参拝とヨンは自分が知っている限り、できる限りのパタヤを案内した。

そして二人の間での毎日の日課は、メール交換。「キットゥン(恋しいヨ)」。「早く会いたい」。互いの仕事中には、こんなメールが一日、何回も繰り返された。誠実で優しい人。マイの友達の間では、ヨンの評判はすこぶる良かった。「お前のことが好きで好きでしょうがない」。「この世で一番お前を愛してる」。「お前が死んだら俺も死ぬ」。タイ人男が恥じることもなく言うセリフ。

ヨンもその例外にあらずして、我々が赤面してしまいそうな甘い言葉を、どんなときでも、そしてどんな場所でも、マイに投げかけた。「タンマイ・クン・パァクワン・ヤンナン?(何であなたはそんなに口が上手いの)」。「プロッワー・クン・スワイ・スッスゥールーイ(君の美しさがそうさせるんだヨ)」。

生まれ持ったタイ人男の性質なのか。彼らは思ったこと、考えたことをすぐその場で口にしてしまう。『南国人特有の単純な思考回路』 がそうさせるのだろう。発言するよりも先にその後の展開を案じてしまう「恥の文化」。毎日甘い言葉なんてかけない、たまに言うことに効力がある「わびさびの文化」。我々、日本人の考え方とは違う。

しかし、何につけてもシンプルに物事をとらえるタイ人にとっては、いつでもどこでも甘く優しく接して欲しいというのが現実のようである。ヨンとマイの恋愛は順調だった。しかし、典型的タイ人カップルのいい例として、平凡ながらも甘い恋人生活を日々繰り返していた二人だったが、それも半年が過ぎると、二人に微妙な変化が訪れた。

早い期間で美容専門学校に行く資金を貯めたい、そんな思いから時には客と夜を共にしていたマイに対し、彼女の夢を早く叶えてやりたい。しかし自分にはそれを面倒見るお金もなければ、いい職に就く学もないというヨンの現実。当初は、苦汁の思いでマイのいない夜を我慢していたヨンだったが、そんな日も長くは続かない。二人の間には、ケンカをする日が多くなった。

「何で昨晩は家に帰らなかったんだ」。「ごめんなさい、ファラン(外国人)のお客さんと一緒にいたから」。「連絡のひとつぐらいよこしてもいいだろう!」。「ごめんなさい、電話する暇がなくて」。「ウソつけ。お前、その客のこと気に入ったんだろう」。嫉妬の言葉がマイの胸を突く。

「そんなことないじゃない。私だって嫌やヨ。でもこれは仕事なの。何で理解してくれないの」。「俺のことが好きだったら、何で客と一緒に行くんだ。お前のことは理解できない」。優しいはずの男から、鋭い言葉が飛び出す。「…泣…泣…」。マイの目から溢れ出す涙。しかし、マイには確固たる夢がある。ヨンのことは愛していたが、1年で学費を貯めると決めた目標。短期間の我慢と自分を納得させたバーでの仕事を辞めることは出来なかった。二人の恋人関係は、倦怠期に入った。

そしてある時期を境に、ヨンは仲間と時間を共にすることが多くなる。「これ俺の友達、可愛いだろ?彼女、お前のこと好きだってヨ」。ある晩、ヨンは友達の一人にある女の子を紹介された。彼女は、バービアでもう1年近く働いている売春婦の一人だった。ヨンはマイのことが気になっていたが、その日、彼女からは、「客に連れ出されたから、今日は家には帰れないかも」とメールが来ていた。ヨンはその晩、初めての浮気をした。

それから、ヨンは毎日のように、仕事を終えると仲間と遊びに繰り出す。そんな日々が続いた。ヨンの生活形態は一転した。「どうせマイの奴は、お気に入りの客とイチャイチャ楽しんでるはずだ」。嫉妬はやっかみに変わった。これまでマイとのデート費用、食事代に使われていたお金は、ディスコ代、カラオケ代に消えていった。ヨンは仲間と遊ぶ空間にはまっていった。

「何で昨晩は家に帰ってこなかったの?」。「ああ、友達と飲んでいたから」。「寝ないで待ってたのに」。「ごめん、断れなくて」。「もう私のことなんて愛していないんでしょ!」。「お前だけが好きだヨ、愛してるヨ」。

たいていのタイ人男は、どんなときでも甘い言葉を忘れることを知らない。それでもヨンは、一度はまった仲間との楽しい遊びの空間から抜け出すことはできなかった。マイも、ヨンがたまに浮気をしていることは薄々感じ始めていた。一緒にいる時、自分の知らない女からヨンの携帯に電話があることもしばしばだった。「誰よ!」。「いや、友達だから」。「うそつき!」。「いやホントだって。俺はマイだけを愛してる」。甘い言葉も真実味がなくなってきていた。

もう我慢できない。付き合いが10ヶ月を迎える頃、マイはヨンと別れる決心をし、彼に切り出した。「私、もう我慢できない。ヨンは帰ってこない夜が多くなったし、いつも友達、友達って言ってばかり。私といてもつまらないんでしょ。私のこと飽きたんでしょ。私のこともう愛してないんでしょ!」。「俺はマイと離れることなんて出来ない。マイだけが俺の全てだ」。もう甘い言葉はウソにしか聞こえなくなっていた。

「もうあなたのパクワン(甘い言葉)にはウンザリ」。マイは、自分の荷物をまとめ部屋を出ようとした。「待ってくれよぉ~、俺のこと捨てないでよぉ~」。半べそ状態のヨン。タイ人男は、子供のように駄々をこねるのも上手い。「もう、ヤダったらヤダ!離して」。そして、その瞬間、パクワン男の態度が豹変した。

「ガボッ!!」

「ふざけやがって、俺はお前のことこんなに愛してるのに!」。マイの頬から流れ出る鮮血。ヨンの頭には、目先の怒りしかなかった。マイを止めるために彼は暴力を振るった。「何すんのよ!!」。マイも部屋中の物をヨンに投げつける。しかし、所詮男の腕力には敵うはずはなかった。マイは、力なくその場に倒れ込んだ。腫れ上がった顔、涙と血が入り混じって頬をつたる。ヨンは我に戻った。

「ごめんよぉ~、ごめんよぉ~、でもお前とは離れたくないんだぁ~。マイだけを愛してるんだぁ~」。結局、マイとヨンは形上は仲直りをした。しかし、マイのヨンへの気持ちは、それを機会に愛から恐怖へと変わっていった。

タイ人の男は口が上手い。考えられないような甘いセリフを吐き、まめに連絡をとり、女を口説き落とす。しかし、自分のものになれば、女が自分にはまれば、彼らの態度は一度に豹変する。彼女に飽きが来れば、浮気なんて当たり前。口説いた女の数がものを言う、というのが彼らの世界。彼女に浮気がばれてもマイペンライ。そう、彼らは暴力で彼女を縛りつけるからだ。

「彼の暴力が怖くて別れられない」。そんな女の子を多く見てきた。パタヤ警察署、殴られ腫れ上がった顔の彼女と、連行されてきた彼氏の図を多く見てきた。

「愛をささやく」⇔「暴力を振るう」。飴とムチの典型的とも言える図式を恋愛に用いるタイ人男。すぐに浮気をするどうしようもないヤツら、女に暴力を振るうとんでもないヤツら、これがこれまでのボクの偏見的な考えだった。しかし、それもちょっと様子が違うようだった。

女を口説く、甘いセリフを吐く、子供を作る、結婚する、浮気する、暴力を振るう、離婚する。全ては、自己中心、放漫、わがままな考えの元。そう、『タイ人は単純な思考を元に生きている民族』だということ、それだけだった。

サヌック好き、キーキアット、時間にルーズ。マイペンライ(気にするな)、でも時には「ペン」。気にするときもある。彼らは、どんなときでも自分に正直に、自分に素直に、そして本能のままに生きている。女が好きなら女を口説け、子供が欲しいなら子供を作れ。他に魅力を感じたら浮気をすればいい。彼女が言うことを聞かないなら、暴力で縛りつけるしかない。非常にシンプルな考えだ。でも、動物の生態って本来は、そんなものなんじゃないだろうか。

怒りたい時に怒る、泣きたい時に泣く、喜ぶ、楽しむ、哀しむ。彼らは恋愛を楽しんでいる。好きに生きている。人生を楽しんでいる。そして、なんだかんだ言っても、いいかげんでわがままなタイ人男に惚れるタイ人女の存在がある。

子供のままごと?自分勝手?いや、計算高く、人の様子を伺って生きる人生よりよっぽどマシに見えるけど…。

 

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