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パタヤジョイ【5】―別れのとき

投稿日:2005年1月5日 更新日:

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忘れもしない。その年が明けた1月2日の夕方。「Honey..My friend motorcycle accident..I go hospital...」。ジョイは、友達がバイクで事故ったから病院に見舞いに行ってくると僕に告げた。僕には何の疑いもなかった。「ホント、友達は大丈夫?で、何時ぐらいに帰って来れるの?」。ジョイは、夜8時にはホテルに戻ってくると答えた。

しかし、8時を過ぎても、深夜0時を回ってもジョイは、ホテルには戻ってこなかった。僕はジョイに電話をした。。「Why Don't you come back??」。半ば怒ってジョイをけん制したが、ジョイからの返答は、「Sorry,,honey..I come back later..」だけだった。僕は部屋で酒をあおった。そして、その日、ジョイは部屋へと戻ってはこなかった。

翌朝早く、ドアをノックする音で、僕は目を覚ました。ジョイだった。僕は怒りで何も口にはしなかった。ジョイは何も言わずに布団の中に潜り込むと、そのまま眠ってしまった。「恋人がいるのか?」。「他に客がいるのか?」。僕の頭の中には、もう怒りなどなく、ただ嫉妬と猜疑心でいっぱいだった。僕は、お昼過ぎに起きたジョイに、思い切って切り出してみたが、彼女は「Sorry honey...」を繰り返すだけだった。

そして、その嫉妬への答えは、奇妙な出会いから解決された。その夜、僕らは、あいも変わらず、ジョイのバーにいた。ここ最近、毎日の日課である。そして、1時間ほどして、ジョイとともにバーを出ようとしたときだった。「こんにちわ。日本の方ですか?」。パタヤで会う初めての日本人だった。「あっ、はい。そうですが…」。僕は答えた。

Nさん(推定30代半ば)は、以前に日系企業の駐在員だったことがあるらしく、日本に戻った今も、年に何度かパタヤに遊びに訪れるという。タイ語はペラペラだった。彼は日本に奥さんもいるのだが、パタヤでは女性の他に、オカマを連れ出すのも好きだという変わり者だった。そして、先に奇妙な出会いと書いたのは、Nさんがジョイのオカマのお姉さん(見た目はどう見てもお兄さん)を連れ出しているからだった…(汗)。

ジョイは、僕とジョイ、Nさんとオカマの姉さんの4人で、その後、遊びに行くことを提案してきた。僕は軽くショックを受けていた為、躊躇したが、まあ、少しだけならと、とにかく4人でディスコに行くことになった。だがNさんは見た目通りのいい人だった。そして、オカマを連れているとは言え、話せば常識人だった。僕はジョイとの出会い、これまでの経緯などを話してみた。Nさんは飽きもせず僕の話に耳を傾けてくれた。そして、彼は非常にタイ事情というものに通じていた。

「僕の部屋に来てくださいよ。で、もう少し4人で飲みましょう」。僕は彼をホテルへと誘った。タイのこと。パタヤにはまってしまったこと。ジョイとのこと。こんな相談を出来るのは、日本ではまずあり得ない。僕は、ありのままの自分の気持ちを彼にぶつけた。ジョイとオカマの姉さんはテレビに夢中だった。Nさんも以前タイ人女性にはまったことが何度かあると、僕に語ってくれた。ただ、オカマを連れ出すのは、楽しいのと気晴らしだという僕にはわけの分からない理由だったが…。

そして、僕は昨晩の出来事について相談した。Nさんは「ジョイには間違いなく別の客がいるのだろう」と言った。こういうバーで働く女性たちは若いときに子供を作ってしまった子持ちの場合が多い。家族ならず親戚一同、一族を養っている子も多い。また、ジョイぐらい可愛い子なら、他に4、5人の常客がいてもおかしくないとはっきりと僕に伝えた。僕は半信半疑だったが、それも後に現実へと変わった。

「ちょっと外に出ましょう」。Nさんはジョイと姉さんに「コンビニに行ってくる」と告げ、僕を外へと促した。「ヒロ君の気持ちは、痛いほど分かるし、だからこそ彼女の本当のことも分かって欲しい」。Nさんはこう切り出し、優しく僕に語りかけてきた。何でもジョイと姉さんが、さきほど話しているコソコソ話を耳にしてしまったらしい。その内容はこうだった。

『この時期は、誰もが休暇である年越しシーズン。現在、僕の他にジョイにはドイツ人の常客が来ている。でも、ジョイは、今、僕と毎日を過ごしている。ドイツ人は金払いもよく手放すことの出来ない客。昨晩は何とか理由をつけ、一晩僕から離れたが、今晩はドイツ人との約束を破ってしまった。僕と一緒に居たいけど、上客を手放すことも出来ない。どうすればいいか分からない…と姉さんに相談していた』とのことだった。

確かに、僕がジョイにあげていた小遣いは一日500バーツほど。あげない日も多かった。それでいいのだと思っていた。しかし、現実は違っていた。Nさんは僕に伝えた。「ジョイちゃんが、ヒロさんのことを好きなのは確かです。でも、それは客として、客の中での上位を占めているだけのことです。悲しいけど、最終的には彼女たちはお金を選択するしかありません。彼女が好きでこの仕事をしているわけはありませんから。ジョイちゃんもお金が必要で、泣く泣くこういう仕事をしているという現実を分かってあげて下さい。ヒロさんが、タイに住まない限り、彼女も本当の恋をすることは出来ないと思います」。

タイに住まなければ…。僕の中で、タイは擬似恋愛に留めるべき場所であった。僕は、タイになんて住むことは出来ない。そんなことは分かっていながらも、僕はジョイに恋をした。承知していたはずの禁断の果実を食べてしまったのだ。こういう壁にぶち当たることは、当然の報いだった。「それでも、ジョイちゃんは今、ヒロさんと時を過ごすことを選んでいます。今のままで、今まで通りジョイちゃんと接してあげて下さい。嫉妬はすることもあると思いますが、ただ、彼女の現実も分かってあげて下さい」。

ズバリ言われてしまった。聞くと、多くの子は、常客から毎月の送金を受けているのが、常だと言う。そういう常客を手放すことが、彼女にとってどんなに痛いことかを分かってあげて下さい。彼女たちには、恋愛云々の前に、養う子供、養う家族という存在があるのだから…。僕に、そんな金銭力はなかった。そして、僕は、当然のことでありながらも、知りたくもない現実を知ってしまった。だが、知らなければ、うやむやは更にひどくなったに違いない。その日の僕には、酒を浴び、思考能力を減らそうとする考えしか他に解決策は浮かばなかった。

ジョイと出会った日。ジョイと過ごした日々。僕の頭の中には、ジョイとの幸せな時間しかなかった。僕の中での彼女は、狂おしいばかりの5日間を過ごした魅惑の日々の中にいたジョイ。僕はそれ以上何も考えずに、再びタイを訪れた。確かに、よくよく考えれば、僕の中のジョイは、タイのことなど何も知らない無知な僕が、日本同様の思考で恋したジョイ。僕の中でのジョイは以前のまま止まっていたのだ。

しかし、タイでの彼女は、もちろん以前の彼女とは違う。僕と知り合う以前からいた客。僕と知り合ってから後に出来た客。ジョイは僕が日本に帰ってからも、毎日、仕事を繰り返していたのである。そして、こんな仕事をずっと続けたいなど思うわけもなかった。彼女が最終的に選択するのは、金銭的に余裕のある男性と結婚することだと思われた。

「もし、僕に彼女の家族を養う金銭力があればいいのか?」。「もし、僕がタイに住めば彼女と恋をすることが出来るのか?」。答えは見つからなかった。

そして、僕は、あの一晩を除けば、10日間の滞在中、全ての時間をジョイとともに過ごした。とにかく、僕はジョイを喜ばせることに終始した。嫉妬や詮索という感情は出来るだけ自分の中だけに抑えることにした。ただ、彼女の笑顔をずっと見ていたかった。

滞在最後の晩、ジョイは僕のお別れパーティーを店で催してくれた。僕の首には店の子たちから、次々と生花の花輪がかけられる。「今、日本は寒いんでしょ?」。ジョイは長袖のパーカーを僕にプレゼントしてくれた。その日の晩、情けなくも僕は別れの寂しさから、ジョイを前に涙してしまった。そして、ジョイもまた僕の胸の中で泣いた。今後いつ来れるかなど分からなかった。もう会えないかもという嫌な予感さえもなぜか頭をよぎった。

僕らは、ろくに寝ず、翌朝を迎えた。残酷にも、時間通りにホテルへと迎えに来たタクシーに乗り込む。「また、すぐに会いに来るから…」、僕の言葉に力はなかった。ジョイも、その意味を分かっているようだった。タクシーに乗り込むと、ジョイは、それ以上僕と目を合わせようとはしなかった。

帰りのタクシー。空港。機内。そして、日本についてからの電車の中。その全ての時間、僕の目は、涙で潤んでいた。そして、その半年後、ジョイは、僕の前から姿を消した。

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