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プロフェッショナルハンター―日本人で稼ぐ女たち VO.1

投稿日:2004年1月16日 更新日:

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「いらさいませぇ~」。「見るだけタダでしゅ」。「中へどじょ~」。微妙にずれた発音。「オニイサン、一時間500バチュだけ、ヤスイね」。右から左から耳に入ってくる呼び込みの声。視界には眩いばかりのネオンと、そこに踊る日本語の文字群。そう、ここはバンコクは、ソイタニヤこと、タニヤ通り。タイで最も日本語が飛び交う場所である。

およそ200mに渡るこの通りには、ナイトクラブをはじめ、居酒屋、日本料理屋など100軒近くにも上る店舗が、所狭しと軒を連ねている。そして、言わずもがな、タイで最も日本人に有名なこの通りには、タイ人女性との一夜の恋を求め、多くの助べえな日本人たちが訪れる。

「英語なんて不必要」、「タイ語なんて持っての他」、そして「タイ全土から厳選された美女たちの数々」とくれば、タイにいかがわしい目的で来たムッツリな助べえ男たちにすれば足を運ばない手はないのである。こういう店で働く女性たちは厳格な面接の元、クラブへと採用される。もちろん日本人専用高級クラブというだけあって、タイにしては各店の料金システムは高めだが、彼女らは他に林立するゴーゴーバーや、バービアなどといった部類で働く女とは、一線を画す武器を合わせ持っている。それは日本男性の心をくすぐり、トロ~リとろけさせるような類のものである。

怪しい日本語の呼び込みの元、店内に入ると、たいていの店には、囲いで仕切られた個別ソファーが何個か存在する。もちろん、奥さんの目をこっそり盗んで来ました♪なんていう駐在員のような人種のためには、プライベートルームも用意されている。そして、ほとんどの店の売りはカラオケ設備。配属時分からのしこたまの努力で、日本語を巧みにあやつる彼女らの中には、アグネスチャンも飛んで驚くぐらいの上手さで日本の歌謡曲を歌いこなす子もいるからすごい。ライバル店が軒並みに増え、集客競争が激しくなった今では、どの店もだいたい一時間500~600バーツという価格で、思いっきり薄い水割り飲み放題というシステムを取っている。もちろん、その脇にはスナック菓子などのつまみと、、、まあ、日本のキャバクラと同様の雰囲気だ。

その昔は、現地駐在員を中心にオッサンの集まるようなところという雰囲気であったが、最近では、ちょっとした長期休暇で訪れる大学生や、バックパッカーもどきの客層も増えてきたようである。と、タニヤカラオケのことを軽く説明したが、、タニヤが、その辺の連れ出しバーなどと違う点は、まず、彼女らホステスは客を選べないということである。例えば、あるバービアに、異臭をそこらじゅうに巻き散らすおデブさんが入店してきたとする。はっきり言って、「私くさい人が好きなんです。」とか、よほどの我慢強い女の子じゃなければ、彼の横には付きたがらないだろう。

しかし、タニヤにおいて、それは許されない。彼女らは、プロ中のプロである。そういう人種の人間であっても、彼女らは業務を全うする。「ナマエ、ナニデスカ?」。「シゴト、ナニですか?」。「トウキョのヒトデスカ?」。まずは、おあつらえ向きの自己紹介から始まる。ただ、この際、必ずといっていいほど聞かれる質問が「ドコに泊まってイマスカ?」である。

これは、決してあなたの滞在先に興味があるのではなく、店から遠いかを確認しているわけでもなく、もちろんホテルフェチでもなく、、ただ、あなたのお客としてのグレードをチェックしているのである。彼女らの頭の中には、バンコク中のホテルがインプットされている。ここで、4、5つ星級のホテルの名前が出てくると、あなたはお客として最高級の勲章を、彼女らの中で与えられ、「こいつの金、取れるだけ取ったろ!」と、心の中で思われるのである。

さてさて、そんな自己紹介が終わると、お次はカラオケタイムへと突入。そして、あなたが歌うと、もちろん拍手喝さい。「ジョズデスネ」。日本では決して考えられない待遇と、いい匂いをプンプン発する彼女に、もう気分はムラムラ。日本のキャバクラでもある程度のおさわりは許されるが、ここでは多少の度が過ぎても「お客さん、ちょっと」と顔のいかつい黒服のお兄さんに、肩をたたかれ、酔い気が覚めるといったような心配事もない。「いやぁ、いい所だねぇ」。気分はもう最高潮である。

そして、そんな夢のような空間に浸っていると、んっ!なんと彼女が自分の手をニギニギしてくるではないか。そう、お楽しみのひと時もそろそろタイムオーバー。彼女らは、ここから一気に攻勢をかけてくる。彼女が、その小顔をスッと自分のほうへ近づけてくる。「えっ、これってキチュ?」なんて、甘い考えで頭の中をいっぱいにしていると、彼女が耳元で一言。「エンチョーシマスカ?」。「うっ、もう一時間も経ったのか」。そして、延長しようかどうかを迷っていると、彼女からとどめの一言。

「イッショニイキタイデス」。

タニヤに通い詰めている人種の人間には、当然の一言だが、初めてタイは、タニヤを訪れた人なら、財布の中身も考えずに、ただ鼻の下を伸ばしながら、うなづく事だろう。「オ、オーケェー」。さあ、ホテルに着いての彼女の行動も、まさにプロそのもの。日本人の心たるものをわきまえている。これが、その辺のゴーゴーで連れ出した女だとしたら、、ショートタイムならば、女はすかさずタオルを手にシャワールームへと消えていくだろう。とっととやって帰ろうという算段である。ロングタイム(一夜拘束)なら、極力ヤラれまいとするため、やつらは、テレビをしきりに見てみたり、「ツカレタ…」なんて言いながらウソ寝を決めこんだりもする。

しかし、タニヤの女は違う。彼女らは、日本人がわびさびを好み、表と裏の顔が違うムッツリ助べえさんが多いことを熟知している。行為の前には、ちょっと恥ずかしそうな素振りを見せたりする。いざ、行為が始まると「ア~ン」とか「ウ~ン」とか「イイデス」とか、日本人が好みそうな言葉を発したりもする。(多分) もちろん、マグロなどという人種は皆無といってもいい。(いや多分) 彼女らは、まさにSWATの精鋭部隊のように訓練、教育されているのである。

行為が終わると、再びシャワーへ。そして、だくだくにかいた汗とか、汚い汁とか、とにかくいろんな汚物をきれいさっぱり洗い流し、あなたがシャワールームを出てくると、、彼女は、決してけだるそうにテレビを見ていたり、勝手にミニバーのドリンクを飲み、お菓子をかっぽじっていたり、ふて寝を決め込んでいたりという、GOGO嬢のような素振りは見せない。ベッドは、ルームサービスが入ったかのごとく、再びきれいに整頓され、鏡の前で髪を整える彼女は一言、「アナタ、サイコーデシタ…」とは言わないが、行為の最中とは再びうって変わり、恥ずかしそうにイソイソとシャワルームへ消えていくのである。

「ああ~、幸せ」。あなたは、もうすでに彼女にはまりつつある。二人がシャワーを浴び終えると、テレビでも見ながらの談笑が始まる。今度は、お店とは違う、二人だけの空間。日本のドラマ、俳優、歌手、、彼女らは、いろんな武器を使って、あなたとの話を盛り上げるだろう。あなたは、ついつい日本での仕事の愚痴をもらしてしまう。彼女は、きっと興味深そうに耳を傾けるだろう。彼女があなたに尋ねる。「ケッコンシテマスカ?」。あなたは即答する、「いやいや、してないよ」。「デモ、カノジョ、イルデショ?」。「いないよ」。「ウソツキ、アナタ、カッコイネ!」。

彼女らは、呆れるぐらいにおべっかが上手い。「いやぁ、君、口が上手いねぇ」なんて言いつつ、あなたは、まんざらでもない様子。そして、そんな冗談話も尽きると、再び、彼女からのトラップ攻撃が始まる。「アシタも、イッショ、イタイ」。可憐を装った目つきで、あなたを見つめる。あなたの中には、それを断る理由など微塵もない。「オ、オーケェー」。おやすみのキス。そして、腕枕なんかしながら、自分の腕に埋もれる彼女の寝顔を見ていると、、だいたいの男は、これが、本当の恋だと錯覚してしまう。

早朝、ガサガサとした物音で目を覚ますと、彼女はもうすでに帰りの身支度を始めている。「えっ、まだ8時前だよ。もう帰るの」。彼女は言う「トモダチとアウヤクソク、ゴメンナサイ」。「まじで、しょうがないなぁ」。すると、モジモジしながら彼女が目で何か合図を送ってくる。彼女らは、決して、その辺のゴーゴーの女のように「マニー、マニー」とか言いながら、手を出してきたりはしない。「あっ、ごめんごめん、で、幾らあげればいいの?」。「アナタのスキ、ダケデイイ」。「えっ、俺、こんなの初めてだから分かんないよ、いつも幾らぐらいもらってるの?」。「4.000バーツ、グライ」。

思っていたよりは高いと思ってしまうが、あなたはもちろんいい値を払ってしまう。そして、彼女は感謝のワイ(合掌)とともに、、「コップンカァー(ありがとうございます)」。部屋を出て行く際には、あなたのホッペにチュッ!そして、「キョウモ、オミセ、マッテマス」。目の覚めないうちに、愛しい彼女も去ってしまい、寝ぼけながらも、一人寂しく部屋にたたずむあなた。

あっさりと帰ってしまった彼女に「やっぱり、商売女だよなぁ」。などと軽く頭をひねったりもするが、部屋中を見渡せば、昨日散らかした部屋中のゴミはきれいさっぱりとなくなり、脱ぎ捨てだったはずの服は整然と畳まれている。よく出来た女だ」。彼女らは、日本人が何をすれば好み、こういうちょっとした気遣いに喜ぶ(弱い)ことを熟知している(教育されている)。再び、あなたの頭の中には、昨晩の彼女とのひと時が甦ってくる。「ああ、今晩も、あの子に会いに行こう」。あなたは、すでに彼女にはまってしまったのである。

他の男に取られたくはない。早く会いたい。滞在期間、毎晩のように、タニヤへと吸い寄せられていくあなた。彼女も、徐々に気を許し出してきたようだ。昼間、二人でデートすることも多くなった。二人でお店に出向き、仲間からの冷やかしの言葉に幸せを感じることも多くなった。そして、あなたは、彼女が自分の本当の彼女であると、錯覚してしまう。

ある晩、部屋で一緒にいると、彼女がおもむろに話し始めた。「ワタシ、コノシゴトキライ、ハヤクヤメタイ」。すでに子供がいたり、貢いでいる彼氏がいたりといった子も多いのだが、「田舎の家族を養うため」、「兄弟の学費」、「親が病気」などといった理由で夜の仕事に手を染めた子も少なからずいる。

彼女が言った。「イマ、オヒル、ビヨシノガッコ、イッテル」。彼女の夢は、美容師になること。今は、週に3度、昼間、美容専門学校へと通っているという。彼女は、この仕事を始める前は、ブティックで働いていたとも言った。彼女らは、自分を語り、自分の家族を語り、案にオカネが要り用であることを伝えてくる。しかし、そんなに簡単に日本人からお金が出ないことも彼女らは知っている。これは、以後、あなたが常客へなるための種まきなのである。

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魅惑の日々を過ごし、日本に帰ると、あなたの頭の中は、もう彼女のことでいっぱいいっぱい。しかし、もぬけの殻のようになりながらも、仕事、仕事と自分の日常へと徐々に引き戻されていく。「あ~、また彼女に会いにタイに行きたいなぁ」。あなたの唯一の楽しみは、仕事から帰り、彼女からのメールをチェックすること。彼女への国際電話もしばしばだ。「ハヤク、アイタイデス」。もう、あなたはいても立ってもいられない。

しかし、そんな期間が2、3週間も続くと、彼女からの連絡もまちまちになってくる。「他に客がついているのか」と、不安でいっぱいのあなた。実際、彼女に客がついているということも考えられるが、はっきり言って、まだ、あなたは送金をしていない男。つまり、常客になっていない客なのである。

彼女らは、他にいるそういう常客を相手にすること。そして毎日の仕事でいっぱいいっぱい。あなたが、彼女らからの連絡を頻繁に受ける為には、彼女の常客の仲間入りすることが求められる。ある時期、彼女は、あなたのことを軽く突き放すだろう。なかなか繋がらない電話。返ってこないEメール。モンモンと思い悩むあなた。彼女との思い出の写真を手にタイでの日々に思いを馳せてみる。

そんなとき、彼女から久しぶりのEメールが、、ききとしてその内容を開き読むと「ズット、イナカ、カエッテマシタ」。そうか、田舎に帰ってたから連絡がなかったんだと、自分を納得させるあなた。

しかし、「イマ、オトサン、ビョウキ、ニュインシテマス。ワタシ、シゴト、イッパイスル。タイヘン」。案に客を取らなければならないと伝えてくる彼女。あなたは再びモンモンとする。その上「ビヨウシノ、ガッコ、イケナクナル。カナシイ」と同情を誘う一言。ここが分かれ道である。これは彼女らのトラップ。あなたは試されているのである。

もし、あなたが同情の内容だけのメールを送り返したとしたら。彼女は、徐々にあなたとの連絡を絶っていくだろう。もし、あなたが「少しでいいのなら」と、お金を送る素振りの内容のメールを送ったとしたらすぐにでも、彼女からのメールが返ってくるであろう。それも彼女の銀行の口座番号、丁寧にも送金の方法など細部に渡る詳細込みの内容のメールが。

めでたく、彼女に、新しい常客が出来た瞬間である。

日本人で稼ぐ女たち、タニヤ嬢。彼女らのほとんどは、数人の常客を確保している。客からの送金だけで、月10万バーツ以上を稼ぎ出す、強者もいる。両親にプレゼントしてあげた田舎の豪邸、住まいはバンコク市内のマンション、車を持っていたりもする。腕には、一般のタイ人にはあり得ない本物のブランド時計。彼女は、あなたが思っている以上に、優雅な日々の生活を繰り返している。

「いらさいませぇ~、中へどじょ~」。今日も、彼女らは、高級ブランドの香水でキツイ匂いをプンプンさせながら、次なる獲物を探している。

 

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