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男たちの南国物語 VO.50 怪しい稼業も数撃ちゃ当たる―パタヤ商売編

投稿日:2018年10月29日 更新日:

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nangoku7

「もしもし?リュウさん、大変です!ついに問い合わせのメールが来ましたよ!!」

「えぇっ、まじでー!?ついに来たかー、何、何?Tシャツのオーダー?それとも豊胸クリーム?」

「いえいえ、それが観光ガイドですよ。多分、夜のお供だと思うんですけど、問い合わせてきた人、来週にもタイに来るようです。それでパタヤに数日滞在する予定だから、その際に会えれば、みたいな内容のメールなんですよ。年齢は分かりませんが、文章から察するに、まあ、中高年の人だと思いますけど。今、ネットカフェにいるんで、ちょっと来てくださいよー」

「へぇー、やったねー。OK、分かった。すぐに行くから待っててー」

パタヤ便利屋コムなる、如何わしいホームページを立ち上げてから、しばらく経過した頃だった。ついに僕らの元に初めての問い合わせメールが届いた。行きつけのネットカフェに毎日出勤するように通って日々ホームページ運営作業に勤しむ、そして随時メールを確認することが僕の役目だった。それまで受信していたのは迷惑メールの類ばかりだったので、そのメールを目にした時は、店内でひとり飛び上がらんばかりに驚喜した。じっくり三回ほど読み返してからリュウさんに電話した。それはこちらの想像を色々と掻き立てる、10行にも満たない簡潔な内容のメールだった。

「初めまして、小生は、以前バンコクで駐在員として数年ほど勤務したことがありまして、この度、十数年ぶりにタイを訪れる予定です。急な連絡ですみませんが、来週の週末にかけて二、三日パタヤにも足を延ばすつもりです。宿泊先はマリオットホテルを予約してあります。都合がよろしければ返信ください。いろいろ案内してください。よろしくお願いします。○○□□」

「ふーん、、バンコクに駐在していた人かぁ、幾つぐらいの人だろうね。十数年ぶりの訪タイってことだし、マリオットって言ったら高級ホテルだから結構年配の人かもねー」

「そうですね。それで、どんな感じで返信しますか?これってリュウさんがお相手してくれるんですよね?」

「なんで?二人で行けばいいじゃん。大丈夫だよー」

「えー、でも、この人って一人で来るんですよね?一人のお客さんにガイドが二人つくっておかしくないですか?」

「まあ、いいんじゃない。とりあえず二人で挨拶に行って、あれだったら俺が一人で相手してもいいからさー」

「そうですか、はい、、まあ、そういうことなら……」

僕は、観光ガイド業を思いついた時、それはリュウさんが担当するものだと勝手に決めつけていた。というのも僕はかなりの人見知りで社交性の欠片もない人間である。それに大して現地事情に通じているわけでもないし、通訳出来るほどのタイ語能力もないわけだから、それは当然の考えだった。

情報は金になる、安売りしてはいけない、とリュウさんが主張するままに、ガイド料金は一時間500バーツに設定していた。更に同行する際の飲食費は別途お客様の負担とさせて頂きます、という強気な内容のものだった。もちろんガイドが二人つくなんて記載はしていない。複数人の団体客ならいざ知らず、一人のお客さんを二人で案内するとなると、自ずと僕ら二人分の飲食代も合わせて全て一人で支払ってもらうことになるわけで、そこが気がかりだったが、リュウさんは全くそんなことなどお構いなしといった感じで、「飯はどこに連れて行こうかなぁ、飲みに行くのはバービアとゴーゴーバーどっちがいいのかなぁ」と、さっそく夜のガイドを想定した店選びを始めているのであった。

それから、僕らは自己紹介を兼ねた丁重な内容の長文メールを返信した。だが、初めの問い合わせメール同様、再び簡潔なメールしか返ってこなかった。それは「了解しました。それでは当日現地に到着したら△△さんの携帯に連絡します。楽しみにしています」といった程度の手短な連絡メールで、心配性の僕は、本当に大丈夫なのかなぁ、面倒くさい性格の人だったら嫌だなぁ、ていうかブッチ(ドタキャン)されたら最悪だよなぁ、まさか誰かの悪戯メールなんてことはないよなぁ、と、当日を迎えるまであれこれと不安を募らせるばかりだった。

そして、迎えた週末金曜日の午後過ぎ、万全を期してネットカフェで待機していた僕らの元に連絡が入った。リュウさんの携帯にかかってきたその電話で僕は僅かながら安堵した。それから、夕方6時に僕らがホテルに迎えにあがるという約束になった。僕らはいつもより幾らか小奇麗な格好をして、お客様がいるホテルへと向かった。

20分前には現場に到着。そわそわする僕をよそに、リュウさんはいつも通り平然面してホテル内をウロウロと徘徊する。高級ホテルだからゲストフィー(ジョイナーフィー)があるのではないか?と疑ったリュウさんは、フロントの女性に気さくに声をかけて、それを確かめていた。どうやら同伴でのチェックインがなされていない場合は、後に誰かを部屋に連れ込む際にゲストフィー(ジョイナーフィー)として1,000バーツ程度、追加で徴収されるようだった。

そうこうしていると、背後から「チーン!」と小気味よい高音が鳴り響いた。もしやと思った我々二人は示し合わせたように同時にフロントから後ろを振り返る。すると数メートル先のエレベーターから出てきた欧米人数人に交じって、一人のアジア人らしきオジサンが姿を現した。年の頃は50歳ぐらいだろうか、くたびれたアロハシャツに膝上丈のショートパンツを身につけており、足元はサンダル履きとラフな格好である。久しぶりに肌を露出したような色白の手足は全く日に焼けておらず、どちらかというと病的な青白さといった感じだ。白髪交じりの頭と眼鏡が特徴で、その眼鏡の奥の目がきょろきょろとロビー内を窺うように行き来し、そのついでにフロントにいた僕らの方にもちらりと視線が飛んできた。

「○○さんですか?」とすかさずリュウさんが声をかける。「ああ、△△さんですか?初めまして、今日はよろしくお願いしますねー」、眼鏡の奥の目尻を緩ませたオジサンはニコニコと柔和な笑みを浮かべて僕らに歩み寄り、握手してきた。

奇遇にもHさんは僕と同郷である福岡の人だった。さっそく食事に行こうという話になり、「何が食べたいですか?」とリュウさんが訊ねると、「何でもいいですよ、でもせっかくやからタイ料理がいいねぇ、できれば大きなチキンが食いたいねー」と、Hさんが答えた喋り方(イントネーション)で僕はすぐに九州の人ではないかとピンときたのだった。僕が同郷だと分かると、Hさんはすぐに打ち解けた態度になり、その後は気兼ねないコテコテの博多弁で、僕の出身地や出身校など、あれこれ素性を訊ねてきた。僕もそれに合わせるように努めて博多弁で喋る。リュウさんは僕らの地元話には当然ついてこれず、ただ微笑ましげに聞き入るだけだった。

Hさんの食事の希望は、「鶏肉を丸ごと一羽そのまま焼いたような料理を手づかみでむしゃぶりつくようして食べたい」という突飛なものだった。「ケバブ屋みたいな直火焼きのチキンってことですか?はじめ人間ギャートルズに出てくる骨付きの肉みたいな?」とリュウさんが訝しげに訊ねると、「そうそう、あんな感じよー」とHさんが嬉しそうに答えたので、そんな店は屋台以外そうそうないだろうと僕は思った。

結局、リュウさんの提案でサードロードにあるタイ料理レストランに行くことにした。その店には海鮮料理のほかイサーン(東北)料理のメニューもあったので、Hさんの希望に近いものが別で注文できるかもしれないとリュウさんが考えついたのだった。さすがに丸ごとは無理だったが、ガイヤーン(焼き鶏)、ムーヤーン(焼き豚)、カオニャオ(もち米)などがテーブルに並び、タイ風のナムチム(激辛ダレ)をつけながら、それらを手づかみで食べるスタイルにHさんは満足した様子だった。

Hさんの仕事は医療機器メーカーに勤める営業職という話だった。日本では年の半分ぐらいは出張で全国各地を飛び回るような生活を送っているらしく、海外出張も頻繁であるようだ。

「今回の出張はオーストリアのウィーンで学会があってね。出席してきたんやけど、それも一日で終わって時間ができたもんやから、ついでに隣のチェコにも数日足を延ばしてきたとよ。プラハは前々から一度訪れたいと思っとった街でね。それで滞在中は毎日プラハの街を歩いて回ったんやけど、石畳の通りに、お城みたいな建物が延々と続く古い街並みでね、それは圧巻やったばい。ふと自分が中世の街にでも迷い込んだような錯覚を抱くっちゅうかね。私もいろいろ行ったけど、プラハはヨーロッパの中でも随一やろうね。そりゃあ美しい街やったばい…。

それで、その帰りに南アフリカにでも寄ってから日本に帰ろうと思っとったんやけど、ホテルが取れんかったとよ。私はマリオットホテルの会員なんやけど、マリオットなら会社の経費で落ちるんよね。それで色々探しよったら、久しぶりにアジアでもいいかなと思ってね、結局タイにしたとよ。メールにも書いたけど、実は昔バンコクに駐在で4年ほど暮らしたことがあるんよね。そん時に何度かパタヤを訪れたことがあってね…」

Hさんは世界各国を又にかける仕事柄、大の旅行好きでもあるらしく、その土地々々の料理を食べるのを特に楽しみにしているとのことだった。なんでも昼間は、パタヤで評判のレストランがあるシュガーハットホテルまで、レンタルバイクをして一人で食事に出かけてきたらしい。そんな行動力があるのなら、我々をガイドで雇う必要なんてあるのか?と不思議に思ったが、Hさんは訪れる地域に住む日本人と接触を図り、現地を色々案内してもらって交流するのを楽しみにしているようだった。

「何でも好きなもんを注文してもらって構わんばい」とHさんは寛容な言葉を僕らに投げかけ、「この何とも言えんアジアの気だるい空気、穏やかな夜風を感じながら飲むシンハービールは最高ばい!」と屋外席を気に入った様子で、タイビールを何本もお代わりして勢いよく飲み続けた。タイ語の「マイペンライ(大丈夫、気にしない)」と、福岡で言うところの「よかろうもん」はニュアンスが近いという自説を口にし、タイ人は福岡人と似通った性格のようで親近感が沸くのだと饒舌に語った。

小一時間ほどの食事だったが、豪快に飲み食いしたので、僕はあっという間に良い加減に酔っ払ってしまった。腹も満足したところで、いざ飲みに繰り出すことになった。食事時にHさんから世界各国の風俗話も聞かされていたので、まずはパタヤが誇る夜の繁華街ウォーキングストリートにお連れすることにした。とりあえず一軒目は日本人旅行者に人気のゴーゴーバーを覗いてみる。リュウさんが先導するように店内に足を踏み入れると、それに続いたHさんはすぐに店内をざっと見渡し、ステージ上で踊る女性たちを隈なく物色するようにステージの周りを一周すると、「ここはダメやね、次行きましょう!」と勝手知ったる常連客のようにふるまった。僕らはそれを見て苦笑いするばかりだった。

二軒目に入ったゴーゴーバーで、Hさんはすぐに気になる女性を見つけたので、リュウさんが店員に声をかけて、その女性を我々の席に呼んだ。ビールはもう飽きたというので、Hさんはウイスキーの水割りを注文した。そのドリンクが来る頃には、「あの子もいいねー」とHさんはステージ上で踊る違う女性を指差した。すぐに二人の女性がHさんの両隣に座る形となった。どちらの女性も若く色白の小柄な女性だった。僕はそれを見て、Hさんはロリ嗜好に違いないと感じ、冗談半分で彼に突っ込んでみた。「そうねー、確かに私はロリコンかもしれんねー」とHさんは眼鏡の奥の目尻を緩ませて屈託なく笑った。

「どっちがいいですか?あれだったら二人お持ち帰りしても大丈夫だと思いますよー」とリュウさんが笑って問いかけると、「それもよかねー」とHさんはすぐに了解し、「じゃあ、会計してもらって」と早々に連れ出すことを催促してきた。Hさんは若い生娘二人を前に、もう我慢できんばい、といった様子がありありだった。そこには国際交流じみた会話など微塵もなく、Hさんは両隣に座る女性の華奢な体つきを、ただ交互に舐め回すようにじろじろ見るばかりで、我々はドリンクを飲み干すことなく滞在時間も僅かにして店を後にした。

リュウさんは、ホテルのフロントで事前に聞いていた、ゲストフィー(ジョイナーフィー)として連れ込み料金が1,000バーツほど追加徴収されるようだと、Hさんに説明した。Hさんは幾らか顔をしかめたので、それならば400~500バーツ程度の安ホテルがありますよ、と提案した。結局、Hさんは近くにあったヤリ部屋風の安ホテルを利用して、僕らは事が終わるまで待機することになった。ものの20~30分程でHさんは戻ってきた。いろいろ溜まっていたものを放出したせいか、油分でテカっていた顔も幾分すっきりして、さっぱりした銭湯帰りの親父みたいなご様子である。いかがでしたか?と訊ねる我々にHさんは満足げに感想を語った。

「やっぱり若いのはいいねぇ、肌がツルツルやけんねぇ。でも、まだ時間もあるし、もう一軒行こうかねぇ。あれやったら次は白人がいいねぇ、どこか白人がおる店は知らんね?」、Hさんはまだヤル気満々だった。

それにしても、パタヤで白人のいる店なんてあったっけ?しかして、そんな無茶振りだと思われる要望にもリュウさんは見事に応えてみせた。ウォーキングストリートを後にして、相乗りタクシーのソンテウをチャーターしたリュウさんは、Hさんを郊外にあるボディーマッサージ店に連れて行った。そこは豪華な内装を擁する3階建の大型風俗店だった。リュウさん曰く、タイ語ではアプオプヌアット、またマッサージパーラー(略してMP)なんて呼び方もあるらしい。

店内に入ると、すぐにスーツ姿のタイ人スタッフが我々を出迎え、店内を案内するように隣について回る。1階部分には普通レベルの女性、2階に上がるとVIP級の女性と、それぞれ雛壇が分かれていた。とはいえ、いずれもタイ人女性たちばかりだ。リュウさんがスタッフの男にタイ語であれこれ要望を告げると、3階にある物置のような小部屋に連れて行かれた。どうやら3階にロシア人ダンサーによるセクシーショーみたいな特設ステージがあり、そのダンサーの女性たちを裏で斡旋している仕組みのようだ。

粗末な小部屋で数分ほど待っていると、スタッフの男が10人程度のロシア人女性を部屋に連れて来た。皆180センチほどの大柄な女性ばかりだった。その中に160センチぐらいの小柄な女性が一人だけいて、Hさんはすぐに彼女を指名した。連れ出し料金含めた女性へのチップはショートタイムで5,000バーツと高額だった。だが、Hさんは全く気にする素振りも見せず、目の前にいるドレス姿の金髪レディに最早ご執心の様子だった。

「それじゃあ、このロシア人はどうしますか?また、さっきみたいな安ホテルがいいんでしたら、どこか案内しますけど?」

「いや、この子はホテルに連れて帰ろうかね。今日はもう、これで満足やけん、あとはホテルでウイスキーでも飲みながら楽しもうかね。私はタクシーでも拾って帰るから、ここでお開きにしてもらって構わんばい」

現地解散という流れになり、夜のお供はこれにて終了することになった。リュウさんが店先に屯していたモトサイ(バイクタクシー)を呼びつけて、ホテルの場所を説明する。Hさんはフラフラと千鳥足で僕らに歩み寄り、別れの挨拶をしてきた。

「今日は色々ありがとうねー、もう最高に楽しかったばい。また今年中か来年にも来ようと思っとーけん、また遊んでくださいねー」

そして、Hさんはポケットから財布を取り出すと、そこから1万円札と1,000バーツ札を一枚ずつ取り出し、「これで大丈夫よね?」とリュウさんに手渡した。

「いやいや、これだと随分多いですよ」と遠慮がちに告げるリュウさんに対し、「いいと、いいと、とっとって。楽しんだ分のお礼やけん」と優しい言葉を投げかけてくれた。

「それじゃー、また遊んでねー」。挨拶もそこそこに、Hさんはロシアンレディと二人バイタクの後ろにまたがって颯爽と帰っていった。

そこには別れの余韻など全くなく、お客さんを相手にした後の精神的な疲れのようなものもなく、ただ豪快で金払いのいい助べえな知り合いのオジサンに飲みに連れて行ってもらって、帰りにお小遣いまでもらった、という感じの心地よい満足感しかなかった。

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