●2018年3月某日<5日日>猿の街ロッブリーへ日帰り鉄道旅
今日は日曜日、猿が生息する街として有名なロッブリーへ日帰りの鉄道旅である。天気はすこぶる快晴で、最高のお出かけ日和だ。娘のKは朝からテンションマックスで気分上々。朝10時過ぎ、ようやくリュックサックに全ての荷物を詰め終えて、バイクでアユタヤ駅へ向かう。結局、朝一番というわけにはいかず【ORD(普通)】11:28 の切符を購入して、のんびりアユタヤ発の鉄道旅スタート♪
娘のKは初めて乗る列車に大はしゃぎだ。ちょうど空いていた二席に嫁と娘を座らせる。僕は連結部分にある乗降口の階段に陣取って、デジカメ片手に一服タイム。煙草を燻らせながら、のどかな景色をぼんやり眺める。すると、Kはじっとしておらず、すぐに僕の座る連結部分までひょこひょこ歩いてやってきた。「アンタラーイナー!(危ないわよ)」とママに怒られるが、まったく気にする様子はない。
というわけで、僕と二人並んで乗降口の階段に腰掛けて、生ぬるい南国の風を浴びながら、走り去る景色をのんびり眺める。あれは山だの川だの牛だのバナナの木だのと、目の前に広がる牧歌的な光景を、タイ語と日本語の言葉で同時に投げかけてみる。
Kは移動中の車内でも終始笑顔ではしゃぎまくり、僕は彼女が振り落とされないようにと、抱きかかえたり足で挟んだり、あれこれ奮闘する次第であった。それから数駅ほど小さな駅を通過して、バンバーチーで一時停車、アユタヤからおよそ一時間半ほどで隣県のロッブリーに到着した。
●ロッブリー駅(タイ国有鉄道/北本線) LOPBURI RAILWAY STATION
→【タイ国鉄】時刻表/路線図
猿が生息する街だけに、到着したロッブリー駅構内では、色んな猿のオブジェがお出迎え♪
ロッブリーといえば、ひまわり畑も有名である。なんでも、ひまわり列車が運行されているようで興味はあったが、タイでは11〜12月が見頃シーズンとのことなので今回は断念・・・。
それに到着したのは、すでに午後過ぎなので、そんなに遠出するほどの時間はない。まあ、猛暑日和でもあるし、3~4時間ほど滞在して街をプラプラ散策し、日が暮れる17~18時頃の電車に乗ってアユタヤに帰還する。あるいは、もし街を気に入るようなら一泊するのもアリという予定を立てた。というのも、駅を降りた時点で、そこかしこに遺跡群の姿が窺えたため、果たして数時間の滞在だけでいろいろ回れるのか、それともレンタルバイクでもしてのんびり一泊したほうがいいのか、とふと想像してしまったからだった。
タイの駅だけに、別に改札をくぐる必要もない。ホームの随所から自由に駅構内へと出入りできるので、列車を降りた後、そのまま線路沿いを歩いていく地元民の姿もある。
先ずは駅を出て、線路沿いの通りを歩いてみる。駅前には現地旅行代理店、相乗りミニバン乗り場(ロットゥー)、小ぶりなホテル(安宿)、スーパー、コンビニなどが簡素な佇まいで建ち並んでいる。タイの長閑な田舎町といった様相である。
すると、さっそく猿に遭遇。中華系のホテルなのかレストランなのか、猿が住みついているというより、あからさまに餌付けされている感じである。人に馴れているのか、さほど近寄らなければ、カメラを向けても平然とした様子。
軒先の通りに突き出すように、猿専用の遊び場の鉄棒が張り巡らされており、客寄せ兼ねた見世物モンキーエリアといった雰囲気である。
嫁が、さっき電車の中で食べていたイチゴの残りをバッグから取り出し、小さな子猿に与える。娘のKもそれに見習い、手にしたイチゴを子猿にあげようとする。すると、周囲から様子を窺っていた他の猿たちが一斉に集ってきた。すぐにボスらしき大猿ものしのし偉そうな態度で現れて、あっという間に袋ごと全てをかっさらっていった。Kが飲んでいたジュース入りのコンビニ袋も、強引に奪われてしまった。
とはいえ、娘のKは初めて身近に接する猿に、さほど驚いた様子も見せず、近所の野良猫とじゃれ合うように距離感を詰めていく。「それ以上、近づいたらダメよ!」とママ(嫁)に叱られ、Kとオサルとの睨めっこがしばし続いた。
通りの向こうにある遺跡へ向けて、再び歩を進めていくと、徐々に猿の数が増えてゆく・・・。
地上を行き交う人間たちを、のんきに上から見下ろすように、猿の表情がさらに我が物顔になってゆく。
やがて人間たちの住居は、すっかり猿に占拠され始める・・・。
ようやく遺跡の全貌が見えるところまで来て、通りを左に曲がると、なんじゃこりゃあ!?そこはもうオサルたちによる無法地帯であった・・・。
歩道には食い散らかした食料、ゴミ、糞尿などが散乱し、もはや猿の惑星状態・・・。(遺跡正面の通り)
無秩序状態の猿たちにより、荒らされ放題の遺跡前の通り。歴史ある遺跡の目の前とは思えないほどの荒れ模様。
見るも無残な元ホテルらしき廃墟?この状況じゃあ、さすがに営業できないのだろうか。
●猿に占拠された遺跡「ワット・プラン・サムヨート」
こちらの遺跡ワット・プラン・サムヨート(WAT PRANG SAM YOD)は、今や猿がいる遺跡としてのほうが有名なようだ。元々は近くにあった森に生息していた猿が、石造りの寺院(遺跡)周辺に住みつくようになったのが始まりらしい。やがて、住民や観光客たちが与えるエサにより、徐々に人間のエリアへと侵食する猿の数が増えてきて、そのうち管理できないまでに増殖してしまったという経緯なのだろうが、それは仏教心が根付くお国柄が要因でもあるのだろう。
生息するのはカニクイザル。ニホンザルよりも小さく、さほどの凶暴性がないことから、徹底的な排除とまではいかないのが現状のようだ。もはや共存とは言えない様相にも見えるが、惰性でこういう無秩序状態になってしまうのは何とも南国のタイらしい。寺院周辺にはゆうに千匹以上が生息しているとも言われている。
と、圧倒的な猿の群れ、かつ不衛生な雰囲気に嫌気が差したのか、嫁は、娘に猿が集って引っ掻かれたり噛まれでもしたら一大事とばかりに、遺跡内まで入るのは止めようとした。「ここから見るだけで十分でしょ?」と入口付近で娘のKに言い聞かせる。すると、入場する気満々だったのか、とたんにKが泣き出した。アンタライ(危険)だからと説明しても全く言うことを聞かない。そして、「キィィィーーーッ!!!」と周囲100メートル四方に余裕で聞こえるほどの大音量で奇声を上げ始めた。こうなったらもうどうしようもない。Kのお得意のパターンである。それを見たチケット売りのオッサンが大笑いする。「皆さん、気をつけてくださいー!今から猿よりも凶暴な子が入場しますよー!」。苦笑いする僕らと、オッサンの冗談など素知らぬ顔で、Kは目の前のオサルめがけて意気揚々と歩を進めた。
猿に占拠された寺院(遺跡)。ワット・プラン・サムヨート(WAT PRANG SAM YOD)
と、こんな感じで、遺跡を楽しむというよりは、そこかしこに屯しているオサルたちを一通り観察して見学終了・・・。
寺院を出ると、そのまま人の流れに従い、線路向こうに見える小さなお堂のような建物サンプラカーン(SAN PHRA KARN)へ。
お堂の中ではロッブリー観光祈願とばかりにタイ人たちが集ってタンブンしている。
サンプラカーン(SAN PHRA KARN)からの眺望。(ロッブリー駅前)
と、こんな感じで、ロッブリーの駅前をプラプラ散策。それから、再び駅前通りへ戻り、駅正面にある遺跡へ。
●ロッブリー駅前の遺跡ワット・プラシーラッタナーマハータート
ロッブリー駅前に広がる寺院遺跡。ワット・プラシーラッタナーマハータート(WAT PHRASRI RATTANA MAHATHAT)。さすがにこちらには猿はいないので、広大な遺跡内をのんびり散策する。ただ、その空間を厳かに、でも何だか懐かしむように感じるだけである。
そんなこんなで、遺跡内を一通り体感すると、大木の木陰でのんびり一休み。芝生の上に寝そべって、そのうち一寝入りする。
ダラダラ過ごしたところで、時間はもう16時近く。というわけで、猛暑で歩き疲れただの、娘も疲れているだのと、嫁目線の判断により、これにてロッブリー滞在終了・・・。結局、駅前の遺跡二箇所を巡っただけであった。まあ、幼い娘もいるしこんなもんだろう。それからミニバン(ロットゥー)停留所を覘くと、ちょうどいい帰りの便があったので、相乗りミニバンでアユタヤへと帰還した。(1時間半ほど)