これはタイ在住の友達(以下:Kさん)から聞いたパタヤならではの夜遊び小話である。タイ随一の歓楽街を擁するB級リゾート地パタヤシティーは、その昔から世界各国の男たちの盛り場として栄えてきた。この街の虜となり陥落した男たちは数知れず。それはこの街にもう十年以上も住んでしまっている僕もその一人であるし、今日もまたパタヤのネオン街のどこかで誰かがビール片手に鼻の下を伸ばしながらアジアンレディに歓楽(陥落)していることだろう。そんな街パタヤにまた一人の日本人男が足を踏み入れた。
マカオさん(仮名/60代半ば)はタイ在住の友達Kさんが日本であくせく働いていたときの仕事先の上司のような存在である。マカオさんに子供はおらず、脱サラしてスナック経営などいろいろ二人三脚でやってきた奥さんは数年前に病気で先立たれてしまった。そして、そんな孤独な男の心の隙間に一筋のブラックな光が差し込んだ。それは仕事の合間、仕事終わりの酒の席で、Kさんから聞く南国のタイという国、パタヤという街での夜遊び話。「それじゃー、今度タイに行ってタイ妻でも見つけて、日本に連れて帰ってきてスナックかタイ料理屋でもやらせるか。グワッハッハー」。それから数年後、マカオさんは本当にパタヤを訪れたのだった。
彼にとっては初めての海外旅行、それがタイ、しかもパタヤ。それは10日程の夜遊び短期旅行であった。パタヤのナイトライフを知り尽くしタイ語も話せる頼もしいブラックガイド役Kさんに連れられ、早速、夜の街へと繰り出したマカオさん。実は日本でもキャバクラや風俗が大好物な人種というだけあって初日にゴーゴーバーとバービアを数軒回っただけで、すっかり南国のネオン空間にも馴染んだ様子。そして好みを聞くKさんに、「擦れた女は嫌、仕事だけど情のあるような女がいいなぁ」とのリクエスト♪
それからすぐに、とあるバービアで二人の良さげなお姉ちゃんに出会いご機嫌最高潮のマカオさん。悩んだ末、一人の女性をチョイス。Kさんも付き合いでお姉ちゃんを選び、皆でディスコに行くことに。だが、翌日ラン島に行こうと誘ってみるとロングタイム2.000Bに追加で1.000Bというシビアな返答。Kさんが助け舟を出し女を問い正す。「もし君がラン島の付き添い代を要求しなかったら、彼は今後の滞在期間中にまた君を連れ出したくなるかもよ?」。しばらく考えた末、彼女「OK、、、」。マカオさんも「いい女だぁ・・」と頬を緩めた。
それからディスコへと移動した一行。大音響と酒、女、暗がりのレーザービーム光線の中皆が歓喜し踊り狂う。昔なつかしディスコ全盛時代に慣らした横ノリステップな腰つきで陽気に踊るマカオさん♪連れ出した彼女ともすっかり打ち解けたようだ。しかし、そんな皆の歓喜の輪の中で唯一人Kさんは何か違和感を感じ始めていた。それは説明しがたいがパタヤナイトライフの法則というか、とにかく彼のこれまでの体験などから来る違和感、いや直感であった。そして、その疑いの矛先はもちろんマカオさんの連れ出した彼女。それは何気なく観察を続け、そして時間が経過し、皆の飲酒量が増えると共に確信へと変わっていった。
マカオさん好みというスラリ長身の色白美女、O(オー)はKさんからすれば見るからに整形顔であったが、そんなことマカオさんには伝えていない。ただ、そんなことはどうでもよく、Kさんが一番おかしいと感じたのはO(オー)が大音響でうるさいディスコ内はもちろん大声で会話しないと聞こえない程の空間なのに、なぜか大きな声を出さない。何を言っているのかよく聞こえない。マカオさんとの会話の通訳もままならない。先程までの店では全く気にならなかった違和感。そして、しばらくして皆でテキーラ(乾杯)して盛り上がっているとき、Kさんは聞き逃さなかった。それは女性ならば「キャッ!」というような甲高い歓喜の声色であるが、O(オー)が発したのは明らかに「ギャッ!」というような芯のある声質であった。
「ま、まさか、、、」。その瞬間、Kさんはそれまでの全ての違和感が繋がったと確信した。それはタイのパタヤの街角でよく耳にする、レディボーイのような野太い声質、それ以外になかった。それから程なくしてディスコでの酒盛りも終焉。すっかり仲睦まじくなってしまった二人をホテルまで送ると、Kさんは自分が連れ出したお姉ちゃんにその違和感をぶつけてみた。「友達が連れ出した彼女だけどさぁ、まさかガトゥーイ(レディボーイ)じゃないよね?」。すると「あんた何で分かったんだ!?」と呆気ない返答。「や、やっぱり・・冷汗)」。まあ、同じバーで働く身だから彼女?の事情を知っているのも当然であるが実は体は全て改造済みだという。うーむ、微妙・・・。でも、まあ、とにかく嫌な予感とは当たるものだ。
しかして翌日、当の本人に会うとマカオさんは朝からご満悦の表情。今日も彼女に会いに行くつもりだとまさにノリノリ絶好調の南国パタヤ滞在二日目といった御様子で、彼女?のことを完~全に気に入ってしまったようだ。性格も良いし全ての滞在期間中を彼女と一緒に過ごしたい♪と陽気に語るマカオさん。まあ、強いて言えばあそこの具合があまり良くないがサービス満点で大満足!と恍惚の笑みを浮かべる。Kさんは本当のことを言おうか迷った。。まあ、でも本人が気にいっているし、全て改造済みらしいし、知らないのであれば良いこともある。短期間の旅行だし、本人の希望を尊重し、無理やり仕方がないと自らをなだめ、しばらく様子を見ることにしたのだった。。
それから二日目、三日目と連日、改造済みの彼女を連れ出し、最早すっかりハマってしまったマカオさん。ついには「この子、本当に性格良いし、日本に連れて帰ろうかな~♪」などという言葉を口にするまでに。「ヤ、ヤバイ・・・」。もうKさんにとっても我慢の限界であった。まさに見るに耐えないという感情である。四日目の夜、Kさんはマカオさんを誘い、気分転換にと先ずは彼女のバーとは違う他のバーへ行こうと
提案した。そして酒もある程度入ったところで、酒のツマミとばかりに、以前あったパタヤ夜遊びの小話をマカオさんに話して聞かせた。
「数年前のことなんですが、地元の友達がパタヤに遊びに来て、あるバーで出会った子にハマって、毎日連れ出す程気に入ってたんですが、その後、実は男(オカマ)だということが分かったんです。もちろん滞在中ずっと彼女と過ごしたと思っている友達はその事実を知らないまま、日本に帰国。彼の帰国後に分かったんです。それで当の本人は次もまた、すぐにでも彼女に会いに行きたいと口にするほどハマってしまったんですよねぇ」。「へぇ~、、それでどーなったのよ?」。Kさんが選んだ屋外のバービア群、夜空を眺めながらのんびりと酒をたしなむ南国の開放空間に、マカオさんも楽しげな表情で会話に相槌を打つ。
「いやー、やっぱり真実を告げないとダメだと思ったんで、二人で酒を飲みに行ったときに腹割って全部話したんですよねぇ。かなりビックリしていたというか、まさに腰を抜かしたような表情になってましたけどねぇ。まあ、それも今では思い出のような一つの笑い話ですよ。面白い街でしょ、パタヤって。もしマカオさんが僕の立場だったら、どう対処します?」。「いやぁ~、ほんとに面白い話だねぇ。でも、タイはすごいねぇ。そんな話もあるもんだねぇ。いや、でもねぇ、俺でもK君と同じように真実を話してあげると思うよ。うん。そうだなぁ。それが男同士の友情ってもんなんじゃないの~」。
まんまとハマった!と策士のKさんは、それを聞いて、すかさず言葉を投げ返した。(しかも大きめの声ではっきりと!絶妙のタイミングでまさにツッコむように~)「そうですか、では話しますね。実は今、マカオさんが気にいってる子、あれオカマですよっ!」。マカオさん、唖然・・・愕然・・・。まさに腰から砕けるように座席から転げ落ち、「マジでぇっーー!!」とびっくり仰天ズッコケ劇場。
その後、結局、マカオさん的にはいいネタ(土産話)ができたという結論で落ち着いたようだが、それからは数人のタイ女性と夜を共にし、すっかりタイ(パタヤ)に撃沈した様子のマカオさん。またその内すぐにでもタイに来る予定だという。。と、パタヤ初心者にありがち?な小話でした。パタヤの夜遊び好きな人は怪しいレディ?に出遭わぬよう要注意!?(テイクケアユアセルフ)