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諦めない男【前編】―正論か性論か

投稿日:2006年7月1日 更新日:

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これは2006年ワールドカップ時期に、パタヤの歓楽街で実際に起こった何とも生々しい事件簿である。その日は、友人数人とともに、GOGOバー、バービアと飲み明け暮れており、ちょうど呼び込まれたバービアに入ったのは、もう深夜も3時を回った頃だろうか。酔いどれた体に、更に鞭打つべく、ドリンクをオーダーする。「ホェアー・ユー・カム・フロム?」という娘たちのお決まりの質問にも、ちょっとウンザリ気味である。

そこで、ママさんらしき中年の女性が、一同に加わり、矢継ぎ早やに質問を投げかけてきた。「ユー・コリアン・チャイマイ?(あなたたちは韓国人でしょ?)」。「チャイ、チャイ!(そう、そう)」。いつもの冗談、僕らは韓国人であるとウソをついた。「チンチン?(本当?)」。なぜかとっても嬉しそうなママさんの表情。韓国人の彼氏でもいるのだろうか。それとも、昔、韓国に出稼ぎに行ったことでもあるのだろうか。

「じゃあ、何か韓国語を話してみてよ」。半信半疑のママさんが、タイ語でまくし立ててくる。「アンニョンハセヨ~(こんにちわ)。カムサハムニダ~(ありがとう)」。知ってる限りの韓国語を陳列してみる。

「あっちに座っているのも韓国人よ」。僕らが韓国人であると信じてしまったママさんは、僕らにカウンターの3席隣に座る韓国人観光客と会話をしてみてくれと促してきた。すっかり酔いどれ気味の僕は、その韓国人に向って「アンニョンハセヨ~(こんにちわ)」と国際交流の花を咲かせるべく、言葉を投げかけた。

「$ёпЭ……!!(ハングル語)」。そして、無表情の彼からは、もちろん意味不明のハングル語の返答。しかも、ちょっぴり怒っているようにも見える。こっちをにらんでいるようにも見える。「…(汗)…・なぜ?」。なんて愛想のないヤツなんだ!(微怒)。いや、でも実はそれには訳があった。

そう、何を隠そう、この男こそが今回の事件を起こした張本人なのである。

もちろん、母国での徴兵を受けてきたであろう、ムキムキでがっしりとした体つき。全体的に角ばった顔つき、殴られてもOKですみたいなノリの丈夫そうでエラの張った四角いアゴ。開いているのか分からないほど思いっきり細い目、そして、表情はとっても無愛想。まさに「私は韓国人です」とでも言っているような人物である。(偏見じゃありませんよ)体格のいい体を覆うのは「K-9」と背中に大きくプリントされたTシャツ。きっと「キムチ-9」の略なんだろう(笑)。というわけで、彼のことは「キム男」(推定年齢45歳)と命名することにしよう。

さて、ママさんに言われるまでは、まったく我々の視界にも入ってこなかった韓国人、キム男。すねた表情でカウンター席に腰を押し付け、ドリンクすら注文していない。それでも、彼が怒っているのには理由があった。では、ここでママさんが我々に打ち明けてきた悲痛な悩みを紐解いていこう。(仮想含む)

見た感じ、中々若くて可愛い女の子が揃うこのバービアに意気揚々として現れた韓国人、キム男。彼は無愛想ながらも、自分の中では精一杯の笑顔で女の子たちに接し、あるレディを連れ出すことを決意する。ペイバー(連れ出し料)300バーツ、そして彼女へのチップが1.500バーツ。で、交渉を仲介したママさんは、この見た目がとっても怪しい韓国人に対し、前払いすることを要求した。前払いとは言え、この時点ですっかり頭の中は、ムンムンの助べえ空想にふけてしまっているキム男。計1.800バーツを店ですべて支払い、彼女と店を後にした。うむ、ここまでは前払いという不自然な疑問は残るが、まあ、許そうとしよう。

さあ、ホテルに戻った二人。くつろぐ暇もなく、そそくさとシャワーを浴び、さっそく情事に入る。しかし、キム男のいやらしいエロエロ前儀攻撃にも何とか耐え、大人の準備を整えた彼女に、キム男から驚くべき行動がなされた。コンドーさんを準備する彼女に、装着することを頑なに拒否するキム男。その顔は、エロエロで、しかも野生の本能ムキ出しの恍惚とした表情である・・・(汗)。コンドーさんを着けないと無理だと訴える彼女。それを力で無理やりねじ伏せようとするキム男。格闘の末。怒った彼女は、もちろんホテルを飛び出した。この時点で、あなたならどうする?ここからキム男は自分が韓国人である所以を、まざまざと見せつけて来た。

怒ったキム男。再び店に登場!!

しかし、キム男は、タイ語はもちろんのこと、英語すらろくに喋れない。さきほどの交渉も、ママさんがノートとペンを使って話を進めた経緯もある・・・(汗)。「ЭЯдЙ・・・!!(ハングル語)」。通じもしないハングルで怒り狂い、叫び続けるキム男。全くアホである。そして、再びノートとペンを使い、ママさんが解釈したキム男の怒りの主張の内容とは・・・。「金返さんかいボケェ。俺は生が好きなんじゃい。それが悪いんかい!こうなったら、さっき払った金、全部まとめて返してもらうでぇ・・・(怒)」。という理不尽きわまるもの。

もちろん、店の時点で二人の間で「ゴムなしOKよ♪」という項目の交渉はなされていない。しかも、彼女はホテルへと行き、キム男とのエロエロ前儀にも付き合っているのである。(卑猥な言葉ばかりでごめんなさい) 百歩譲って彼女へのチップはキム男に返却したとしよう。それでも、ペイバー(連れ出し料)まで返せ!なんていうキム男。あんた、よくそこまで言えるよね。そんな低次元なレベルの問題で、断固として許さない的表情をくずさないキム男。何度も言うけど、この男、いやこのおっさん、アホです・・・(汗)。

そこで、我らパタヤの大将G氏が、ママさんの要望に応えるべく、さっそうと登場!英語の通じないキム男に対し、ノートとペンを片手にキム男との再交渉開始。G氏の言い分は「あんたもやることは途中までやっているんだから、女の子がキム男にチップ全額の内1.000バーツを返却して示談。もちろん連れ出したのは事実だからペイバー代は返さない!」というもの。ノートにペンを走らせ、金額やら記号やら絵を書き、幼児レベルの説明を始めるG氏。それに対し、あらゆる話にも全く耳を傾けないキム男。早くも交渉決裂!(汗)。

そこへ電話で再び呼び出された、事件の当の本人(彼女)が店に戻ってきた。キム男の全額返却せよ!主張にすでに怒り狂っている彼女は、それでも大人の対応を見せ、G氏に促された1.000バーツをキム男に返す。一方、全額でないと受け取らないキム男。再び交渉決裂!(汗)。そして、再び怒った彼女はとっとと自分の家に帰ってしまった。正論をキム男に問いかけるママさん+バービアの面々。それに対し、幼児レベルの助べえ根性、理不尽きわまる性論で対抗するキム男。全くアホな光景である。

女性へのチップだけならまだしも、ペイバーすらも返せ!というキム男の理不尽主張にすっかり呆れ気味のママさんは、もう相手にしてられないとばかりに、ここでしかとを決め込むことにした。そして、ここからキム男の韓国人特有のねっちり魂が炸裂し始める。タイ語も英語も全く話せないキム男、ここからバービア篭城作戦を開始!!その恐るべき作戦の内容とは、、、もちろんドリンクなんて頼まない。ただカウンターに黙って居座り、相手を無言で威圧し続けるという何とも単純なものであった・・・(汗)。

「な、なんて阿呆なんだ。このおっさんは。あんたには世間への恥じらいってもんがないのかい?」。バカバカしいながらも、パタヤでは案外ありがちな問題に苦笑するしかない我々だったが、だが、他人目から見ても、このキム男のねっちり篭城作戦。薄気味悪いことこの上ない。だって顔のいかついおっさんが、ドリンクも頼まずに、ただただ何もせず、バーのカウンターにじっと不気味に座っているだけなんですよ。皆さんも想像してみてください(苦笑)。

時刻はすでに深夜4時を回っている。酒を片手に店のレディたちとの談笑を繰り返す我々。一方、微動だにせず、ただただカウンター席に座り一点を見つめ続ける、仲間外れ状態のキム男。こんな状態がしばらく続いた・・・。そして、キム男をよそに、談笑も架橋に入り、深夜5時を回った頃だった。

「ガ、ガタンッ・・・」。(一同、キム男のほうを振り返る)

突然の席を立ち上がる音に敏感に反応する我々。そう、ついにキム男が動いたのである。恐る恐る横目でキム男を観察する我々。「ついに、キム男もこの一同からのフルしかと状態に耐え切れず帰還。篭城作戦失敗か・・・」。そこにいた誰もが感じたことだった。しかし、席から堂々と立ち上がり、帰るかと思われたキム男が向った先は、、

トイレだった・・・(汗)

きっと我慢していたのだろう。そして、用を足し、すっかり体の状態も万全のキム男は、再び元のカウンター席に戻り、無言威圧篭城作戦を、再び開始するのであった。(汗)

さあ、深夜6時近くになり、そろそろこのバービアでの戯言にも飽きた我々は帰ることに・・・。あいかわらず、キム男は我慢比べのようなマゾ状態を続けているが、店の子いわく、我々が帰れば店を閉めるとのことなのでキム男もそこで諦めて帰ることだろう。

そして、その翌日、僕は、その後のキム男が取った驚愕の行動を知ることになるのであった。

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