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男たちの南国物語 VO.45 パタヤ発↑何でも屋さん生活―パタヤ商売編

投稿日:2018年10月4日 更新日:

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nangoku7

稚拙な思いつきだけで簡単に上手くいくほど異国での商売は甘くない!?これがB級リゾートの現実なのか。はたまたローシーズン(閑散期)の影響もあるのだろうか。パタヤの目抜き通りにあるタイマッサージ店の軒先で売られることになった我々お手製の漢字Tシャツの売れ行きはボチボチといったところだった。

意気揚々と製作したサンプルTシャツ計100枚のうち、20枚程はリュウさんが行商のようにバービア街などで売りさばいていた。それから残り20枚程を手元に残して、60枚程をSさん(日本人)経営のマッサージ店で委託販売させてもらえることになった。店は毎日朝10時~深夜0時頃まで営業しており、その間、店の軒先にテーブルを並べて商品を陳列する。またマネキンやハンガーラックで商品を吊るして展示販売することになった。

人々の往来がある通りでの販売に俄然期待は膨らんだ。いったい一日にどれぐらいの枚数が売れるのだろうか。もし完売するようなことにでもなれば、すぐにまた追加で無地のボディーTシャツを仕入れて新作を製作しなければならない。

当然売れ行きが気になり、委託販売を始めて一週間程が経過したところで様子を窺いに行ってみたが、我々の期待とは裏腹に実際に売れたのは10枚程だった。オーナーのSさんによると、実際に商品を売ったスタッフ曰く、買っていったのは外国人観光客ばかりで韓国人とか香港(台湾)辺りの中華系の客層だという。サイズが小さめのデザインであるせいか、やはり欧米人には不向きのようだ。まあ、その点は元々タイ人女性をターゲットに考案して始めた経緯があるわけだから仕方がない。とはいえ、当初思い描いたイメージ通り、お土産Tシャツみたいな感じで売ることには成功したのだ。

だが、気分的には実際に売れたことの喜びより、想像していた以上に売れなかった現実への落胆の方が上回っていた。一週間で10枚程ということは一日あたり一枚弱とかなり微妙な枚数だ。単純計算すれば、このままの売れ行きなら一ヶ月で40枚程度。一枚あたりの利益が100バーツ程なので上がりは計4,000バーツ程となる。これでは僕ら二人の生活費を稼ぐどころか、アパートの家賃すら賄えない惨めなものである。それが目の前に突きつけられた現実であった。

そもそも当時のパタヤと言えば、夜遊び目的の男たちが圧倒的に街を占拠しているような時代だった。健全なリゾート地で見かけるようなカップルとか家族連れなどの姿はごく僅かといってもよかった。それはイコール販売のターゲットになりうる観光客の女性自体が少なく、ニーズ(需要)がないのでは?という現実であった。

レディースのTシャツだけではダメなのか、男性向けの商品も作った方がいいのか。いや観光客たちが往来する通りでは、その喧騒の中でも目立つような商品、行き交う人々の気を引き衝動買いを誘うようなパンチの効いたモノでなければ、存在感で負けてしまうのではないか。やはり当初の計画通り、市場辺りでタイ人女性向けに販売する手段を考慮したほうが賢明なのかもしれない。結局、答えが行き着く先はなく、次の一手を打つための良いアイデアが浮かぶわけでもなく、とりあえず、そのままSさんの店で委託販売を続けるという南国らしい穏やかな流れに落ち着く始末だった…。

しかし、そんな杞憂も一時のことで、それから程なくして二件目の問い合わせが我々の元に届いた。それは現地で日本料理店を営む日本人オーナーからのスタッフTシャツの製作依頼だった。デザインは持ち込みでオーダー数は30枚と小ロットの注文であったが、僕らにとってはその後の方向性を左右する指針(前兆)のようにも思われた。そうか、自分たちで製作した商品を販売するだけではなく、受注製作を募るというやり方もアリかもしれない。とはいえ、パタヤには現地タイ人が経営するTシャツ製作業者が既に存在しているし、数少ない日本人客を目当てに商売するのは賢明なやり方とは言えない。それならば日本向けの販売を考えたほうがいいのかもしれない。

デジタルプリントの商品が最早主流となっている日本の市場で、逆に手刷りのオリジナルTシャツを受注製作するというのはどうだろうか。一枚あたり300バーツで売れるならば日本円で約1,000円ほど。それを国際郵便など利用して発送するとしても、ある程度の受注枚数を獲得できるならば、送料含めた一枚あたりの単価も抑えることが出来るし、需要もあるのではないか。それにTシャツ製作でお世話になっている現地の工房と提携することも出来そうだ。これを機に僕らは日本向けに商品を販売することも視野に入れて、本格的にTシャツ製作ビジネスを始めることにした。

それからリュウさんの提案で、作業場として使えるようなスペースがある住まいをどこかに借りて共同生活しようという話になった。場所はすぐに見つかった。僕らが住んでいるエリアのソイブアカオから歩いてすぐの近距離でサードロードにあるVillage(ビレッジ)という名前の集合住宅だ。大通りに面した施設の入口付近に住人専用の小ぶりなプールと憩いの広場があり、敷地内には1~2階建の一軒家、あるいはタウンハウスと呼ばれる長屋形式の住宅が整然と建ち並んでいる。集落の中央付近に施設の管理事務所があり、管理人のオバサンに空き物件はないかと訊ねると、すぐにオバサンファミリーが所有しているという物件を紹介された。それは敷地の奥のほうにある1階建てのタウンハウスで、ハイシーズンなど数ヶ月滞在する欧米人観光客向けの物件だった。今はローシーズンだから丁度空いているらしい。

リュウさんは得意のフレンドリーなタイ語会話&ナニワなノリの交渉術で、首尾よく管理人のオバサンをまるめこみ笑顔を引き出すと、今後しばらく年単位で長期滞在するつもりだからと、家賃を言い値の15,000バーツ前後から一ヶ月10,000バーツまで値切ることに成功した。更にリュウさんは現在住んでいるホリデイホテルの滞在費が毎月10,000バーツ弱と同額程度であることから、家賃、高熱費など諸々の費用を全て負担してくれることになった。タダで同居させてもらえる上にオンボロの住まいからようやく脱出~引越しできることに当然ながら僕は歓喜した。今後は居候としての身分になるが、僕としては友達とか先輩との初めての海外同居生活のスタート、そしてビジネスを始めるための拠点地を得たような気分だった。

僕らの新たな共同生活の場となった平屋のタウンハウスは長屋形式であるからして、両隣りはコンクリートの壁一枚へだてて繋がっている。家の造りは鉄格子の門構えに車一台分ほどのガレージ(テラス)、そこから一段あがってちょっとした玄関スペースがある。木製の一枚ドアから室内に入ると奥へ縦長い15~20畳ほどのリビングスペース、そして左側手前と奥に二部屋(2ベッドルーム)、その間にトイレ兼シャワールームが設置されている。リビングにはテーブル、ソファー、テレビ、各部屋にもベッド、鏡台、クローゼットなど充実した家具にエアコンも完備されており、古い造りだが僕にとっては格別の住まいとなった。

それにリビングの奥にはこじんまりとしたキッチン、裏口には洗濯(物干し)スペースもあり、Tシャツ製作の作業場としても最適の物件だった。一つだけ不満を言えば洗濯機がなかったことで、敷地内にある管理人ファミリー経営のランドリー(洗濯屋)を使ってくれという雰囲気だったので、僕らは洗濯代をケチって節約すべく、自分たちで手洗い洗濯を始めることにした。

お隣さんは右が当たり障りのないタイ人夫婦で、左は無愛想な独身ファラン(欧米人)の老人だった。住み始めてしばらくして徐々にそのオジサンの正体が明らかになっていくことになるのだが、普段は昼夜問わず室内に篭もっている様子でほとんど見かけないし、食事もピザなどの出前が多いようだ。とはいえ週に何度か見るからに商売女風のケバイお姉ちゃんや若い生娘など、多種多様なタイプのタイ人女性が真昼間から隣のオジサン宅を訪れ、それも短時間で行き来を繰り返すことから、どこぞの秘密倶楽部とか風俗デリバリーサービスを利用しているんではないかと勘ぐりたくなるほどのお盛ん親父であることが判明した。

現地での商売を本格化させていく上での行動範囲を広げるため、リュウさんは中古のバイクを購入した。どこかに出かける際、僕は常にリュウさんが運転するバイクの後ろに跨り、どこへでも一緒についてまわる。まさに寝食共に四六時中、コンビのように彼と行動を共にするようになった。昼間はパタヤの街を隅々まで探索しては、夜になるとバービア街を徘徊し、深夜明け方まであーでもないこーでもないと二人して金儲け談義を繰り返し、夢や野望を語り合った。

あらゆる分野のどんなことにでも興味を示し、すぐに金儲けへと転化させるリュウさんの商売人じみた大阪人気質に感化(洗脳)されるように、僕はTシャツ製作だけに留まらず、何か他に儲かりそうなことはないか?何か無から金を生みそうなものはないか?とメイクマネーだけにひたすら頭を絞り、とにかくパタヤに住み続けるための日銭を稼ぐことしか考えない人間へと変化した。それは単純思考と勢いだけでまっしぐらに突き進むことができる若さゆえの無知なる特権であり、頼もしき兄貴的パートナーのリュウさん、それに僕らを暖かく見守り応援してくれる親日家のアメリカ人ニックの存在などが更に僕の背中を後押しした。

とはいうものの、タイという異国の地で知り合い一緒に商売を始めることになったリュウさんに対しては、共に過ごしてきた濃い数ヶ月の中で色々と感じることがあった。出会った当初の第一印象は怪しい日本人長期滞在者で、彼のこれまでの半生や経歴を聞き知るうちに関心を抱きながらもインチキくさい詐欺師のように感じたこともあった。タイに長く住み続けているからそうなったのか、あるいは元々そういう性格なのか、リュウさんの逞しい原始的な行動力に戸惑うことが多々あった。サラリーマンしかしたことがない僕にとっては、これがビジネス(商売)と言えるのか?と懐疑心が芽生えることが度々だった。

しかしながら、そんな懐疑心の塊で優柔不断かつ社交性も行動力も乏しい僕が、リュウさんを信じてついていこう!と心底から強く感じるようになったのは、Tシャツ製作を始めてしばらく経ったぐらいの頃だった。それはどんな些細なことでも"行動すれば何かが起きる"と僅かながらも手ごたえを実感するようになったからだった。だから僕はどうせ海外だから、もし万が一帰国するような憂き目にあっても仕方がないと諦めんばかりに開き直り覚悟を決め、恥も外聞もなく法的にグレーゾーンだと思われるようなことにも何ら躊躇することなく、先導するリュウさんの勢いそのままにパタヤでの原始的な金儲け道を邁進するだけであった。

パタヤが持つ観光地という特色を生かした欧米人ターゲットの商売。少ないながらもパタヤを訪れる日本人観光客に向けた商売。現地タイ人に向けた商売と狙いどころは色々ある。日本人相手に円を稼ぐのか、あるいは現地でバーツを稼ぐのか。僕らの答えは貪欲に両方だった。リュウさんが思いついた荒唐無稽なアイデアや冗談話を逐一拾い上げ、一度頭の中で練り練り熟考し、はたして具現化できるかどうか順序だてて考える計画の立案、そして具体的な行動へと導く方法を提案することがいつしか僕の役目になった。頭を使い知恵を振り絞り身体を使う。それは金なしコネなし経験なしタイ語力なしと、ないない尽くしの僕ができる唯一のことだった。

相変わらず毎晩のようにバービアで飲んだくれる生活が続いていたので、とりわけナイトライフ(夜遊び)関連の金儲け談義は尽きることがなかった。なんといっても当時のパタヤはまさに大人のディズニーランド。街を歩けば、その他のビーチリゾートにいるような観光客ではなく、世界各国から集ったタイレディ目当ての助べえな男たちで占拠されていたような時代である。そんなタイ最大の歓楽街パタヤであるからして当然ナイトバー業界では札束が派手に飛び交っているのが常であり、そこに金の匂いを嗅ぎつけないわけにはいかない。やはりどんな時代もどんな国でもエロは金を生むのである。だから僕らは当然のようにアダルト関連にも手を出し始めた。

ある晩のこと、深夜行きつけの定番と化したクッキーバーで二人カウンター席に腰かけダラリ酒を嗜んでいると、リュウさんが目の前のカウンター内にいる一人のタイレディ(古株スタッフ)の身体の異変に繊細に気づいた。巨乳好きのリュウさんだけに、彼女の胸が大きくなったことを疑い豊胸手術(シリコン注入)でもしたのではないかと突っ込んだわけだ。

すると彼女は「この胸はコンテー(本物)よ!ワタシの生まれ故郷で売っている特別な豊胸クリームを毎日塗っているから大きくなったのよ!」とスレンダーながらも豊満に実ったオッパイを僕らに見せつけるように自慢した。聞くと彼女の田舎はタイ北部のチェンマイとかメーホンソン辺りの地方だといい、その豊胸クリームは天然のタイハーブから作られているお手製の商品らしい。それにパタヤではガトゥーイ(オカマ/レディボーイ)たちにも人気のようで、彼女(彼)らは同様の女性ホルモンを活性化させる効能があると言われるクリームやサプリメントを普段から多用しているようだ。また専門のクリニックに通って定期的に女性ホルモンを注射するのもレディボーイ界では半ば常識らしい。

そんな酒の席での冗談じみた面白話も、「ワタシの田舎は"タイ北部の美人村"と呼ばれているのよ!」と巨乳自慢の彼女から気を引くワードが出ると、リュウさんは特に敏感に反応した。

「タイ北部の美人村かぁ、、それだったら日本の新宿2丁目界隈のオカマたちにも売れるかもしれないよねー。タイはニューハーフのメッカだし、パタヤも有名なティファニーとか世界中のニューハーフたちには知られているからさー。タイのオカマたちの間で今流行の商品みたいな!?それに天然タイハーブの女性ホルモン活性サプリに、豊胸クリームとかって何だかイケそうじゃない?」

そんな如何わしい戯言にも僕は逐一反応し、恐れを知らぬ子供のようになりふり構わず具体的な行動へと転化し試してみるだけである。リュウさんはインターネット関係に無知(無関心)な人だったので、それは僕の役目だった。しかして僕らは普段から利用しているインターネットカフェに赴き、新たに無料のメールアドレスを取得。それからヤフーの検索エンジンで「新宿2丁目 オカマバー」と検索すると、ヒットして出てきたWEBサイトをしらみつぶしにチェックし、メールアドレスや問い合わせ先が記載されているオカマバーに向けて、適当に考えついた文章のダイレクトメール(DM)を手当たり次第に送信した。

「初めましてこんにちわ。突然のメールにて失礼致します。私どもはタイに長期滞在している日本人で、タイ製品を日本向けに輸出代行している業者です。さて、微笑みと神秘の国タイランドにおいて、"タイ北部の美人村"と呼ばれる知る人ぞ知る地域があるのをご存知でしょうか。自然の山々に囲まれたその○○地方では"女性ホルモン活性効果がある"と言われる希少植物が自生しており、古くから現地の人々の間で美容品などとして活用されてきました。今では一般向けのバストアップクリームやサプリメントなど、それら天然のタイハーブを使用して作られた100%ナチュラルなハンドメイド製品が多数ございまして、当方では各種取り扱っております。現地ではタイ人女性だけでなくニューハーフの方々にも広く人気の商品となっております。もしご興味がございましたらご連絡ください。」

それはビジネスメールとは程遠い何とも怪しげで胡散臭い内容のダイレクトメールだったに違いない。大して詳細を調べもせずに冗談半分、勢いと思いつきだけで即実行したので、それは子供騙しレベルのお粗末な内容のメールだった。とはいえ、もしかしたら本当に売れるかも?と僅かながらも淡い期待を寄せていた僕にとっては、送信してみるのはタダだし、誰か興味を持ってくれる人がいたら儲けものといった程度の行いだった。

はたして結果は全く反応なし、返信なしという見事な空振りに終わった。

「やっぱり海外からのフリーメールだと迷惑メールとして処理されるのか、信用度が薄いというか怪しさのほうが勝ってしまうんじゃないですかねぇ……」

「まあ、そうだよねー。確かに怪しいよなぁ。まあ、しょうがないんじゃない。でも、何が当たるかなんて分からないからね。色々試してみるのはアリだと思うよ」

しかして何とか日銭を稼ぐことしか頭にない僕は、それからもリュウさんの思いつく陳腐なアイデアさえ即実行へと繋げて、如何わしいグレーゾーンのトライ&エラーを日々続けるのであった。

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