「タイにおいて警察は安月給だが、その地位は尊く敬うべき存在である」。そんな「地球の歩き方的考え」をずっと信じてきた。逆らうなんて持ってのほか、むしろワイ(合掌)でもして、にこやかに挨拶ペコペコした方がいい!旅行者当時は、そんな考えで過ごしてきた。しかし、タイを知れば、タイに住めば、いろんな事実が見えてくる。バンコク、その他の地域の警察官が全てそうだとは思えないし、到底、思いたくもない。ただ、ここパタヤの警察。彼らの中には、とても警察官とは思えないあやふやな連中が存在した。
パタヤにおける交通違反の取締りと言えば、やはりオートバイに関してが、圧倒的件数を誇る。ヘルメット無着用運転を中心に、駐車違反、逆走、三人乗り等が、よくあげられる取締り事項だ。 パタヤは、周知の通り観光地のひとつ、もちろん世界各国から多くの観光者が訪れる。そして、パスポート一つで、手軽に契約を済ますことが出来ることから、その多くの人たちが、滞在期間中の移動手段としてオートバイをレンタル。市内を走り回っているのがありふれた光景である。
しかし、パタヤは誰もが認めるナイトスポットの天国でもある。夜ともなれば、通りは観光客たちの吹きだまり、いわば無法地帯へと化していく。そんな中、ノーヘル運転、飲酒運転、ソイ(通り)の逆走などは、外国から来た旅行者にとっては何でもない行為。交通安全、事故半減を考えるタイ政府、そしてパタヤ警察にとっては、取り締まりは当然の行為なのだ。だが、僕が言いたいのは、彼ら警察の中に人種による格差、差別心を持っている者がいるということだ。取り締まりに関しても、罰金を払えないタイ人よりは、外国人をターゲットにする場合が多い。
もちろんタイ政府の公的機関として、自らに誇りを持った警察官は多い。しかし、残念ながら彼らの一部では、安月給のため、派手に金を使い、遊びほうけている旅行者をねたんでいるのが現実だ。ノーヘルの外国人を見るや、ここぞとばかりに取り締まり!そして、罰金という名目の下、お金を請求。「あとの切符整理は俺がやるから」とウソ吹き、そのお金を自分のポケットに、忍ばせるヤカラも少なくはない。(本当は違反者自らが警察署に出向き、正式な切符を切ってもらわなければならない)
そして、悲しいかな、旅行者たちにとっての罰金400Bは屁みたいなもの。「自分の時間を奪われるぐらいなら、その場で警察にお金を渡し、後はそっちで勝手にやってくれ」と思うのが自然の成り行きなのだから、我々個人が何を言ってもこの現実はどうする事も出来ないし、止めさせることなど不可能な行為だ。それでも、僕がこのコラムを書く気になったのは、それ以上にひどい体験をしたからである。
■パタヤ事件簿 ―その1
とある日の昼下がり。僕は、友人のバイクの後ろにまたがり、ロイヤルガーデン(デパート)へと向かっていた。ちょっとした用事であったことから、我々は、地下の有料駐車場には入れず、通り沿いに、バイクを一時停めることにした。もちろん多くのバイクは、すでに駐車済み。そこにはちょっとしたスペースがあったことから駐車するのは5分程だし大丈夫だろうと思ったのだ。それが間違いだった。用件を終え、その場に戻ってくると大きな鎖が我々のバイクに施錠されていた。「何だこれ!動かせないじゃんかよ」。
そして、近くにいたモトサイバイクの男が言った。「ここは駐車違反だ。お前らは罰金を払いに、警察に行かなくてはダメだ。俺が連れて行ってやる」。「はぁ~??」。しかし、ここから警察署までは歩くのには遠いし、走っているソンテウも逆方向だから乗っても意味がない。「OK、OK。で、いくら?」。「200バーツだ」。「はぁ~??何、言ってんのお前」。法外な値段(普通の10倍)に、頭に来た我々は、結局、パタヤ警察署まで歩いて行き、自分達で罰金を払い、全ての処理を行った。そして、冷静にその場の状況を分析すると、ある事実が浮上した。それは、モトサイバイクの男と警察がグルだということだった。
そのトラップは以下の通りだ。
■観光客だまして楽に稼いじゃうぜトラップ!
まず、モトサイの男たちは、自分たちの縄張り(一般客駐輪禁止枠)を活用し、バイクが駐車できるスペース(罠)をわざと作る。そして、何も知らない観光者は、その空きスペースを発見し、そこにバイクを停めてしまうのだ。もちろんその周りには多くのバイクが停まっているのだから、それは彼の自然な行為である。しかし、それを見たモトサイは、彼が駐車し、その場を離れたのを確認すると、直ちに警察に無線連絡。
もちろん警察が来るまでもなく、モトサイの連中は自分達で鎖を施錠する作業を行う。そして、あとは引っかかったカモ(観光客)の帰りを待つだけ。罰金のことなど何も知らない観光客は、警察署の位置も分からなければ、その場をどう処理すればいいのかも分からない。まんまとワナにはまった彼は、200バーツを渋々モトサイに払い、警察署へ。更に、駐車違反の罰金400バーツまでも払わせられるハメとなるのである。おそらくモトサイがこのトラップで得たお金のうちの幾らかは、悪徳ポリスの手に行くのだろう…(多分)。クソッ!なんて腹の立つ奴らだ!!(怒)
■パタヤ事件簿 ―その2
また、とある日の昼下がり。僕は友人のバイクの後ろにまたがり、海沿いの通りビーチロードをひた走っていた。その日は、国際パタヤマラソンを、ちょうど一週間後に控えた時期だった。こういうイベント時、街の一大行事の前には、パタヤ警察は、必ず取り締まりを強化する。それは、市から捻出されるイベント費用を補うためだ。そして、そんなことなどうっかり忘れていた我々、運転中の友人はヘルメットを着用するのを忘れていた。でもこれは我々のミス。捕まってもこっちが悪いのは頷ける。で、実際、警察署の前では、取締りが。
「やばい!」。友人はすぐにヘルメットを着用した。「ピィ、ピィ、ピィ~~!!」。警察官がおいでおいでのポーズを取る。「いや、今、そこから出発したばかりだから」とウソ吹く連れ。もちろんそんなデマカセ、警察には通じません。我々は、素直に罰金を払った。でも、どこか納得がいかなかった我々は、罰金の支払いが終わった後、取締りを受けた警察官Aに、とりあえずもタイ語で伝えてみた。「いつも、ここでは取締りやってないくせに。どうせパタヤマラソンの為の資金稼ぎでしょ?」。「…」。そして、「お前ら、どれぐらいパタヤに住んでるんだ?」。「いや、もう長いよ」。
「そうか。お前らはタイ語もうまいし、人相もタイ人みたいだもんな」。「今度、また同じような目にあったら見逃してよ」。「ハッハッハ(笑)。でも、さっき罰金の領収証もらっただろ。それは2、3日間は有効だから」。「えっ?えっ? じゃあ、もし明日ノーヘルで運転していたとしても捕まることはないの?」。「捕まったら、その領収証を見せれば大丈夫だ!」。「…」。違反切符の領収証に有効期限!?そんな話、どこの世界にある!?我々は、その場で顔を見合わせ、苦笑した。クソッ!なんてあやふやな奴らだ!!(怒)
■パタヤ事件簿 ―その3
またまた、とある日の昼下がり。僕は、連れのバイクの後ろにまたがり、海沿いから二本目の通りセカンドロードをひた走っていた。そして、またもやヘルメット着用をうっかり忘れていた我々はTOPS(ショッピングストア)の前の取り締まり場所で、再び御用となってしまった。(もちろん、我々が悪い)。しかし、我々が調書を取られている間も、ノーヘルのバイクが、我々の前を走る。走る。走る。
我々は、とりあえずも警察官Bに言ってみた。「あのぁ、他にもいっぱいノーヘルで走っている人いますよ。ほらっあそこ!あっちも!」。「んっ?マイヘン(見えない)」。「はぁ~? いっぱいいるじゃん!あれも捕まえなよ!(怒)」。「どこ? マイヘン。マイヘン(見えない、見えない)。あ~行っちゃった」。「追いかけろよぉ!!(怒怒)」。「キーキアット(めんどくさい)」。「ふざけんなぁ、それでも警察かぁぁ!!!(怒怒怒)」。
国の平和と安全を守る警察官がこんなことでいいのか?確かに、我々も捕まった手前で、ごちゃごちゃ言ったのが悪い。しかし、そんないい加減な態度はないだろう!腹を立てた我々は、その場に居座り、罰金支払いをボイコットした。「別にいいよ」 とばかりに余裕の警察官B。無性に腹が立った。「お前は絶対許さない!断固として罰金は払わない!」と、居座る我々。
そして、そのプライドを傷つけられた警察官Bも「勝手にしろ!俺もお前らは絶対許さない!」 と意地の張り合い。そして、怒った警察官Bはふてくされ、仕事も放棄!その後、全く取り締まりを行わなくなった。更に腹が立った。「お前はそれでも警察官か!業務を全うしろ!」。と出来る限りの文句を言う我々。
そして、怒りが頂点に達した警察官Bは、我々に「ファック!シット!」とあらぬ言葉を投げかけてきた。そこからは、もう子供のケンカ状態。およそ30分ほどの口問答が続いた。そして、1時間が経った頃。ここに居座っても埒が明かないと判断した我々は、疲れも手伝い、パタヤ警察署まで足を運んだ。そして、もちろん彼のおこなった言った全てのことへの苦情を訴えかけた。
困った罰金所の担当官は「いや~大変だったね。でも、私は管轄が違うんで」とやはり取り合ってはくれなかった。「いつもそうだよ。我々外国人の発言はここタイでは無視される。俺は、タイのそういう所が嫌いなんだ!」。まあ、それでももちろん、担当官は取り合ってはくれなかったが。
とにもかくにも、腹の居所が収まらないながら、渋々、罰金を支払った我々。「所詮タイだよ。どうしようもない」と話しつつ、バイクが没収されている元の現場に戻った。しかし「あれっ!バイクがない?」。すると、にっくき警察官Bがニヤリとしながら、恐るべき一言。「お前らが罰金を払わないから、あれは移動した!」。「何ぃ!今、払ってきたところだよ!(再怒)」。
「知らないよ、そんなの(平然)」。「どこだよ!!(再怒怒)」。「お前らに言っても分からない。あそこにいるモトサイに連れて行ってもらえ(平然)」。結局、また、モトサイか…そして、とりあえずも言われたモトサイに尋ねてみた。「場所はどこ?で、いくら?」。
そして、モトサイの男は言った。「200バーツだ」。「!!!(怒怒怒)」。またも、そのあるまじき実態を瞬時にして悟ってしまった我々は「自分らで探すヨ!(怒)」と、モトサイと警察官Bにタンカを切り、その場を後にした。そして、それから探し、尋ね、歩くこと30分。ようやく我々がバイクを発見した場所は違反バイクばかりを集積したスクラップ場。そこは、うっそうとしたパタヤ郊外にあった。そ
して、罰金の領収証を片手に、我々は、そこにいる管理人らしき人物に尋ねた。「このバイク俺らのだから持ってくよ。ほらっ、これがその領収証」。しかし、その管理人らしきタイ人の口からは、驚くべき言葉が発せられた。「ああ、そう。で、ここの駐車料金200バーツね(平然)」。「何いぃぃぃ!!!(怒怒怒)」。
そして、我々のバイクには、ちゃっかり鎖が。もう呆れて何も言えなかった。そこで、違反バイクを管理していた人物は、数人の友達とグラス片手に宴会状態。そこではカード賭博も行われていた。そして、そのスクラップ場の隣には、女の園カフェがあり、そのカフェには数人の警察官が溜まっていた。これが奴らの裏の素顔だった。全ては裏で網目状のように繋がっていた。
観光、海、酒、そして女、、その全てを兼ね備えた街パタヤ。僕はこの街が大好きだ。しかし、その雑踏と喧騒うずまく街の片隅からは、裏世界がこっそりと顔を覗かせている。