●2018年3月某日<12日日>自然を求めてカンチャナブリーへ
朝7時起床。朝の散歩がてら一人で外出し、ナコーンパトムの街中を散策。ついでに駅までチケットを購入しに行く。8:20発でもいけそうだが、余裕を見て9:00発のチケットを嫁の分と合わせて2枚購入。ナコーンパトム~カンチャナブリーまで一人100バーツ(子供は無料)。意気揚々と宿に戻ると、チケットを確認した嫁が「何これ?運賃が高すぎる。キーコーン(いんちき)よ!」と突然、怒りだした。僕は駅員のオッサンとタイ語で接したつもりだったが、どうやら外国人料金みたいな感じで高く徴収されてしまったようだ。嫁曰く、タイ人なら運賃は15~20バーツが普通だという。「えっ?まじで…」。それまでチケットの類は全て嫁に任せて購入してもらっていたので全く気づかなかった。
タイの鉄道ってそんなに安かったっけ?若い時分はよく鉄道を利用して、北はチェンマイから南はサムイ(スラターニー)、ハジャイ(マレーシア国境)までと長距離移動したものだが、そういえば以前はエアコン付の寝台列車とか特急列車ばかり利用していたのだった。それにすっかり僕はバス料金の感覚に慣れてしまっていたようだ。改めて購入したチケットを見てみると、ORDINARY(普通列車)の3等チケットで、座席番号も記載されていない。一番安いタイプのチケットである。更に嫁が言うにはバス同様、公共の乗り物であるタイの鉄道に、そもそも外国人料金なんてものは存在しないはずだという。そう言われれば、確かにそうである。しかも、嫁としてはタイ人である自分の分まで100バーツ徴収されてしまっているのだ。(まあ、僕が一緒に購入したせいなのであるが…)
怒りが収まらない嫁は、朝からタイ国鉄の電話番号をいちいち調べて、苦情の電話をかけ始めた。そして、何やらただならぬ雰囲気でゴニョゴニョとやり取りすること数分後…。なんと電話対応した担当者の返答は「それが当然です!」とばかりに全く請合ってくれない結末だった。どうやら観光客が多い路線だからなのか、カンチャナブリー方面のナムトク線では外国人料金を徴収しているとか何とか。ちなみにタイ人料金は15バーツのようだ。ふーん、タイだけに事の真相はよく分からんが、とにかく旅に出発する朝一から面倒事はうんざりである。まあ、100バーツ程度ならバス代だと思えば別にいいではないか。多少の金額だけに、自分が購入した手前もあり、とっとと話を終わらせたい僕であるが、嫁はまだ納得がいかない様子である。
というわけで、出発時間より早めに駅に行くと今度は窓口へ。僕が購入した時とは別の駅員だったので、購入した2枚のチケットを差し出し、嫁が一から事情を説明する。「日本人のサミー(旦那)がさきほどチケットを購入したのですが、外国人料金で二人分徴収されているようです。でも自分はタイ人なので、チケットを変更(差額分を返金)してくれませんか?」といった具合に。しかし、素っ気無い対応の係員のオッサンはチケットを一瞥すると、「すでに購入したチケットは変更(払い戻し)出来ない」の一点張り。全く日本ではあり得ない対応であるが、タイではありがちな話である。さっき僕が購入した駅員のオッサンの姿は見当たらない。嫁の怒りは一向に収まらない様子であるが、まあ、仕方ない。This is Thailand。そんなわけで、朝から軽くすったもんだありながらも、いざカンチャナブリーへ向け出発!
ようやく面倒事から開放され、列車に乗り込むと、昔ながらの木造の車内と、現地の人々が醸し出す牧歌的な雰囲気に癒され、すぐに旅気分になる。
チケットに記載されている「ナコーンパトム09:02発~カンチャナブリー10:25着」の予定時間を、のんびり列車に揺られること2時間ほど。11時頃、カンチャナブリーに到着。
●カンチャナブリー駅(タイ国有鉄道/ナムトク線)Kanchanaburi Railway Station
→【タイ国鉄】時刻表/路線図
カンチャナブリー駅構内を出ると、この日は祝日であったにも関わらず、駅周辺にはひと気もなく、なんだか物寂しい雰囲気。ここで降車した僕ら以外の旅行者の姿も数人程度といった感じだ。他の旅行者たちはそのまま終点のナムトク駅まで行ってしまったのだろうか。
と、すぐにソンテウの親父がふらっと歩いて近寄ってきた。人の良さそうな物腰のオジサンだったので、さほど交渉することもせず、「とりあえず旅行者が集ってそうな安宿エリアまで連れて行ってくれ」と頼む。それからソンテウに乗り込み、街中を10分ほど走ると、ホテルやレストラン、バーなどが点在するエリアに到着した。「ここら辺でいいよ」と親父に告げるも、結局、親父オススメの(バックマージンがもらえる?)ゲストハウスまで連れて行かれる。ソンテウの料金は貸切なので100バーツ。まあ、そんなもんか。
いつもなら周辺を散策してから、じっくり宿探しといきたいところだが、ソンテウの親父が「ここは安くていい宿だから」と強引に勧めてくるので、とりあえず部屋を見せてもらう。と、入口付近のチープな外観とはうって変わって、敷地内に足を踏み入れると、緑に囲まれた閑静な空間で中々雰囲気がよろしい。
ファミリー経営といった感じの小ぶりなゲストハウス(→ノーブルナイト・ゲストハウス)。スタッフの言い値で1泊650バーツ(エアコンルーム/ダブルベッド)。
「2~3泊する予定だから負けてよ?」と一応交渉してみたが、笑ってごまかされ応じてもらえず。まあ、雰囲気もいいし、部屋も小奇麗だったので即決した。
敷地奥には小さなプールがあり、その先には川を臨む眺望。
川沿いにはファミリー向けのコテージ(小屋)もあるようだ。
とりわけ娘は初めてのプールが気に入った様子で、部屋に荷物を置くと、さっそく水遊び。それから娘と小一時間ほどプールで遊んでから、ようやく部屋に戻り、しばしくつろぐ。泳ぎ疲れたのか、娘は午後のお昼寝タイムに突入…。
と、その隙に一人で外出して、宿周辺の通りをふらっと散策してみる。ホテルやゲストハウス、レストランがそこそこ点在する長閑な街並みである。
さっそくカンチャナブリーの地図をGETして、観光名所や現地ツアーなどをチェック。
カンチャナブリーと言えば、やはり映画「戦場にかける橋」で有名なリバークワイブリッジ(クワイ川橋)に、大自然の滝あたりが定番の観光地といった感じだ。カンチャナブリーは旅行者時分に何度か訪れたことがあるが、その時も橋と滝を巡るツアーに参加した記憶がある。うーむ、久しぶりに日帰りの現地ツアーに参加するのもアリかもしれない。
とはいえ、今回はのんびり2~3泊ほど滞在する予定だし、幼い娘同伴の旅である。というわけで、先ずは初日だけに街の概要を把握すべく、レンタルバイク(1日200バーツ)することにした。夕暮れ時から、さっそくバイクで街を探索開始。
適当にバイクを走らせていると、ふと目に飛び込んできたのが、連合軍共同墓地(Kanchanaburi Allied War Cemetery)。第2次世界大戦中、日本軍が建設した泰緬鉄道(タイとミャンマーを結ぶ鉄道)。欧米では「死の鉄道(Death Railway)」として知られているが、その過酷な建設労働によって命を落とした連合軍兵士たちの墓石が整然と並んでいる。ここでようやく欧米人旅行者の姿をちらほら見かける。
それから、いざカンチャナブリーのシンボル、リバークワイブリッジへとバイクを走らせる。
●「戦場にかける橋」リバークワイブリッジ
不朽の名作「戦場にかける橋(The Bridge on the River Kwai)」の舞台となったクワイ川鉄橋。第2次世界大戦中、日本軍が建設した泰緬鉄道が通る鉄道橋である。当時の名称はメクロン河永久橋であったが、映画でクワイ川に架かる橋として有名になったため、その後、クワイ川鉄橋と改名されたようだ。
橋の下を流れる川は、タイ語でクウェー・ヤイ川(Khwae Yai)、ガイドブック等でもクウェー川と表記されているが、映画好きの僕としては、やはりクワイ川(リバークワイ)と呼びたいのである。
戦場にかける橋は、学生時代にレンタルビデオで初めて観て以来、当時販売されていたVHSやDVDを其々購入して所有するほど、僕の中では一番大好きな部類の、もう何度見たかも分からない名作映画なので、学生時代に初めてカンチャナブリーを訪れ、実物の橋を見た時はがっかりした。
というのも、映画では奥深いジャングルの川に架ける木造の橋という、戦時中をリアルに描いたイメージだったのだが、実際の橋は鉄骨コンクリートの橋なのである。そう、実は映画に出てくる木造橋はフィクションなのであった。さらに言うと、撮影自体もスリランカの密林で行われ、映画のロケ地ですらなかったのである。
まあ、とはいえ、ここを訪れると思わず、映画のテーマソングである「クワイ川マーチ」を口笛で吹きたくなる。子供の頃によく口ずさんでいた、あのメロディー、「サルー、ゴリーラ、チンパンジー♪」の行進曲である。
バンコクから気軽に行ける観光名所として有名になった今では、もはや映画の雰囲気など微塵も感じることは出来ない。十数年前に来た時に比べて、橋の上に群がる人の数も明らかに増えた感じである。
橋の入口周辺には屋台や露天が並び、現地の人々と観光客が行き交う、よくあるタイの光景。
列車の本数が少ないのか、鉄橋の周辺を警備するポリスの姿ものんびりした雰囲気。
映画のクライマックスである橋の爆撃シーンをイメージしたものなのか、観光客向けのオブジェよろしく爆弾が鎮座。
橋の向こう側までは歩いて渡れる。鉄橋の途中には、列車が通過する際の待避場所が数箇所設けられており、格好の撮影エリアと化している。
また、徒歩で安全に渡れるように、今では落下防止の手すりや鉄板が厳重に設置されている。
クワイ川鉄橋(River Kwai Bridge)からの眺望。
橋のたもとには、リバーサイドの水上レストラン。
と、こんな感じで、鉄橋を渡って、周辺をプラプラ散策していたら、日が暮れてきたので、川沿いのレストランで橋を眺めながら夕食タイム。
と、食事を終えたところで、すっかり辺りも暗くなってしまったので、ようやく退散。それから適当に街中をバイクで走り、宿へ帰還した。
宿に戻ると、疲れ知らずの娘が再びプールで遊びたいとねだってきたので、ナイトタイムにもう一泳ぎ。そんなわけで、初日は簡単に街を散策しただけで終了した。
さて、明日の夕方までバイクを借りてしまったので、明日はのんびりカンチャナブリーの街中を色々回ってみたいところだが、改めて地図を見てみると、市内にこれといって行きたい観光スポットは見当たらない。戦争博物館あたりは、さして興味もないし、そもそも嫁と娘が喜びそうにない。
更に、肝心の滝はバイクで行けそうな距離ではないようである。うーむ、それならば、再び鉄道を利用してナムトク駅まで行って、滝へ行くのが良さそうだ。宿はすでに二泊分の料金を支払ってしまったので、明日は朝から日帰りで滝巡りという感じがいいかもしれない。ふむ、そんな予定を立てつつ、明日に備えて早めに就寝した・・・ZZZ